夢か現か。
どこにも行かないで。
そう、手を掴んで。
とある血筋に列なるウマにとって、"かの存在"は『神』のようなモノといっても過言ではない。
当の本人たちは「そんなに熱心ではない」と言うけれど、無意識下で"かの存在"が染み込んでいるのが分かるのを見るに…やはり血は争えないのか。
「でも、さすがの僕も信心深い人から神様を
「なにが?」
「いいや?」
「……そう?」
不思議そうにこちらを見上げるキミに「なんでもない」と言って誤魔化す。
今となっては自他ともに認める『親友』の間柄になった僕達だけど、初めの方はそりゃあ大変だった。
結構人見知りの気があるに加え、人付き合いが苦手な子だったから、最終的には『親友』になったと言えど最初の内はどこか距離があった。
それが今ではこうして隣に並んで穏やかに日々を過ごしてくれるようになったのだから、本当に…。
「神様を排除して、そうして…祈られたいワケじゃないしね」
*
『憧れ』に雁字搦めで。
それで自分にその『憧れ』を追いかけられるような才能があると知ってしまったら…もう、後は転げ落ちるように。
そうして、その『憧れ』が『夢』になってしまったら。
あとはもう、ひたすらにそれに縋り付くしかなくなる。
……それが例え、どんなに醜く見苦しくても。
「誰かがキミを『醜い』と罵ろうとも」
「…」
「僕の前にいるキミは──綺麗だよ」
「……しわくちゃになっても?」
「嗚呼」
「…変な人」
全盛期、から目減りし続ける身体に遂に見切りをつけるしかなくなった時。
同じようになったキミにそう言われた。
頭ひとつ分違うから見上げて。
太陽に透けてキラキラと輝く栗毛が、風に攫われて舞い踊る。
「でも、」
「キミがそう言ってくれるなら」
「僕は『僕』のままでいられるかしら」
頬に寄せられた手に擦り寄れば、力強く頷かれる。
本当に…。
「変な人」
・
・
・
放っておけば、そのまま自身の信じる"
どれほど、キミに"かの方"の存在が巣食っていようが、キミが
だから。
「勝手にいなくならないでね」
「分かってるよ」
「ホントに?」
「ホントホント」
華奢な腕は、しっかり掴んでいないとそのままするりとすり抜けていきそうで。
「キミは、僕の『親友』なんだから」
「うん」
「勝手にいなくなっちゃやだよ」
「……うん」
だから。
「ずっとそばにいてね?」
───────
─────
───
それはまるで、『夢』のような時間だった。
きっと、この『夢』が覚めてしまえば……僕はまたあの日々を生きるのだろう。
"かの方"に焦がれたかつてのあの子と同じように。
それでも今だけは──もう少しだけ、このままで。
────ずっとずっと、離さないから。