「騎手くん、久しぶり!」
ある日、唐突に知らない美少女が現れた。
馬耳の生えた、とても小柄な女の子。
ひと言断ってから耳を触らせてもらうと「くすぐったいよう」と言うし、人間本来の耳の部分を見せてもらってもそこには何もなくて。
不思議な、それも見覚えのある毛色の髪をした彼女を僕は強く抱き締めた。
「わ〜騎手くん、ちょっと手加減してくれよ。
今の僕はぷりちーな女の子なんだぜ?」
「うるさい…!勝手に、サヨナラもお疲れ様も言わせずにいなくなった癖に…!」
「…それは、まぁ、すみませんでした」
その日、女の子になったシルバーバレットが僕の元に帰ってきた。
*
シルバーバレットいわく「今の自分はウマ娘」とのこと。
ウマ娘ってなんだい?と聞くとウマ娘はウマ娘で、でも知り合いの中にはミスターシービーやらシンボリルドルフなどがいるらしい。
「まぁ、アイツらはこうやってこっちに来ることもなさそうだけど」
「そうなの?」
「そうさ。僕が勝手に騎手くんに会いたくて来ただけなんだ」
そう言いながらバレットはせかせかと家の掃除をしたり、ご飯を作っていた。
「相変わらずヒトとしては駄目駄目なんだね」なんて言いながら。
「騎手くん」
「なんだい?」
「…怪我しないように気をつけてくれよ。
世界にはあの時の僕みたいにキミを待っている子たちがいるんだから」
「あぁ、分かってるよ」
僕は騎手をしている。
シルバーバレットがこんな形でも帰ってきてくれて、少しずつメンタルケアができた。
人前でも笑えるようになった時はテキに「よかった」と号泣されてしまったのは記憶に新しい。
「頑張ってね、騎手くん」
「うん」
仕事に行く時、エプロンをしたバレットが駆け寄って来てぎゅうと抱き締めてくれる。
五分くらいは抱き締めてくれるので「何でそんなに抱きしめるの?」と聞くと「騎手くんが今日も無事でありますようにって祈ってるんだ!」と。嬉しい。
けれど、
「バレット!」
「あぁ、騎手くん」
バレットが交通事故にあったと聞いて慌てた。
汗だくになって駆けつけると右の頬にでっかい絆創膏を貼った彼女が。
「そんなに焦って来ないでよかったのに。
ウマ娘はヒトと力が違うから、…いやそれでもしくって顔面ダイブしちゃったんだけど」
子どもが車に轢かれそうだったところを助けたらしい。
後日、助けられた女の子とその家族がお礼を言いにやってきた。
「じゃあね、カオルちゃん」
「うん!バイバイおねーちゃん!」
彼らが帰ったあとでホッとひと息ついているとポスっとバレットが肩に頭を乗せた。
「…どうしたの?」
「ごめん」
「え?」
「不安にさせたんだろ?手、震えてる」
震える僕の手をバレットが取る。
その手にちゅ、と口付けた彼女は「もうどこにも行かないから」と笑って、
「…そっか」
「あぁ、そうさ。…んでさぁ、騎手くん」
「なぁに?」
「そろそろ僕誕生日だからさぁ、誕生日プレゼントとして騎手くんが勝ってるところ見たいなぁって…」
「…はぁ、分かったよ」
「やった!」
僕:
騎手くんに会いにやって来た。騎手くんだーいすき。
恋愛感情はないけど実質幼妻してる。
本人いわく『僕はとってもぷりちーな騎手くんの愛バなんだ!』とのこと。
ウマ娘しつつ、生前の記憶もちゃんと保持してる模様。
基本は騎手くんの家に在宅だが、もしかすると騎手くんに連れられて牧場に行ったり、テキに会いに行くこともあるかもしれない。
騎手くんが天寿をまっとうしたら一緒にいくつもりの愛馬。
騎手くん:
白峰透。愛馬が美少女になって帰ってきた。
メンタルズタボロだったところをその原因に治療された男。
交通事故に遭う本来の運命を無敵の相棒が肩代わりしたため、死ぬまで騎手現役を続行できるし、する。天才の再来潰えず。
かつての愛馬(現美少女)に恋愛感情+邪な情は持ってないが、それ以外の情は向けてる。実質共依存関係。しかも重い。
かつての愛馬を本心では誰にも見せたくない。
まぁウマ娘とかいう未知の生物であるのもそうなんだけど『さよならはまだ言えない』のメンタルから考えるとそうなるよなって…。
でもテキやホワイトリリィ・シルバフォーチュンがいる牧場には連れて行ってくれる。
この世界でも『さよならはまだ言えない』を執筆するし、担当編集が激重感情向けられてる愛馬本人になる。
ケラケラ笑いながら本文添削していく愛馬なので本ができあがったら他の軸の『さよならはまだ言えない』より特級呪物化が凄まじいかもしれない。
自分が天寿をまっとうしたらシルバーバレットが一緒についてくるとナチュラルに思ってる男(正解)。