さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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誰だろうね?



あなたはだぁれ?

昔から、時折視えた。

大体は黒いモヤは人影だったけれど。

 

「…」

『…』

 

その人は鬼の面をしていた。

もしくは般若面だったのかもしれない。

でも幼き日も今もそういったことにあまり意識を割かない人間であるから、最終的には「どっちでもいいか」と適当に結論づけた。

 

『……』

 

鬼の面をしたその人は、いつもジッと自分を見ていた。

そして何かを時々言うのだけれども、その声は聞こえない。

だから自分はいつも首を傾げてしまうのだ。

そんな自分を見て、鬼の面の人は何かを口にした後、寂しそうに笑うのだ(何となく、雰囲気が)。

そうして自分の頭を優しく撫でてくれるのである。

その手つきはどこまでも優しいもので──……。

 

「チビ?」

「…なぁに?おじいちゃん」

「いや、こんな日当たりの悪い部屋に居て!ほら、埃もいっぱいだし!!」

「わぁ、」

 

立ち上がると優しい手つきで服に着いた埃を払われ。

 

「ほら、みんながいる方に戻ろう」

 

手を引かれる。

 

「うん!」

 

自分はその手が好きだった。

この手はいつだって自分に優しくしてくれるから。

だから自分もそんな優しい人に笑ってもらえるように、いつも笑うのだ。

お父さんもお母さんも優しいけれど、おじいちゃんは僕が初孫と言うこともあってか、度を越して僕を可愛がってくれる。

 

「おじいちゃん。ぼくね、おおきくなったらお父さんみたいなウマになりたいんだ…」

「ウン?そうナノ?」

「おじいちゃんがね、前見せてくれたビデオのお父さん、カッコよかったから」

「そっかそっか」

 

ヨシヨシと自分の頭を撫でる手にぼんやりと思考する。

 

───撫で方、あの面の人とソックリだなって。

 

 

よくある話だが。

身内にはたいそう甘い人でも外ではそうではないという話は往々だろう。

愛妻家なり子煩悩なりを内では見せていながらも、他所ではと〜っても怖い人!

そういう人間も居るだろう。

だがしかし、だ。

 

(ぼくってそんなに怖いカナ〜?)

 

『大侠客』とまで謳われていた祖父からその座を受け継いだのは過去も過去。

圧倒的なカリスマを持っていた先代だったがためにヒイコラ頑張ってきたワケだが、

 

(ピルピル震えてる…)

 

そこまで恐れられること、ぼくしたかしら?と自分の前に引き出された"不届き者"を見ながら考える。

 

『あ、あの……私、その……』

「ウン」

『ほっ!ホントにぃ!!貴方様のご家族に危害を加える気なんてなかったんですぅ!!!』

「……ア゛?」

『こっ!この通りです!!どうかお許しください!!』

 

土下座する"不届き者"。

 

(いやいやいや)

 

"不届き者"のそんな様子に思わず半目になる。

いやだって、ねぇ?

確かに町に入った当初こそビクビクしていたけど、特に何もないと見るや町の人々にも迷惑かけてたのに?

『何もない』=誰も見てない、ってことじゃないんだよ?

 

「……」

『ヒッ……!』

 

思わず無言で睨めば、"不届き者"は怯えたように身を震わせた。

 

(……うーん)

 

この調子じゃ反省なんかしてなさそうである。

というか、そもそもの話としてこんなヤツをどうして…。

 

(おっと、)

 

リラックスリラックス…。

こうも簡単に感情見せてちゃ示しつかないからネ!

 

 

「…やっぱコエ〜よな、バックさん」

「初代から代替わりした時は文句あったらしいけど結局は立ち振舞で全部沈めたって話だし」

「まァ初代の愛子だったらしいから似るわなぁ…」





【先祖返り】:
ホワイトバック。
【白の大侠客】と謳われた祖父からその座を引き継いだ。
当人はぽややんとしているが傍目から見るとフツーに怖いとか。
…基本は子煩悩で孫煩悩なんだけどね。

【白の大侠客】:
シロノマガツ。
伝説の侠客。
小さいながらも町ひとつを牛耳っており、それは代替わりした今もである。
実は大侠客として表に出る際は顔隠しとして面をしていたとか。
なのでそのカリスマに惹かれた配下たちもNo.2とかそういう地位の人々を除くと誰もその素顔を知らなかった模様。
なお家族。
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