さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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…あれ〜?



勘違いの脳焼き

「よォ、スマンなガキども。

俺らみたいなオッサンたちがグラウンド占領しちまって。

…けどあと10分ぐらいしたらアイツも満足するだろうから暇つぶしに話でもしておくか」

 

その日、僕たちが見たのはいつも草野球で使う、探せばどこにでもある小さなグラウンドをとんでもない速度で爆走する小柄なウマとそれを見物している黒髪のウマの姿だった。

 

「アイツはえーだろ?」

『はやい!』

『すごい!』

「そうさ、すげぇんだぜ。…でもなぁ、アイツはなぁ」

 

黒髪のウマは我がことのようにその爆走するウマのことを自慢げにしていたが、それと同じくらい残念そうな顔をしていて。

 

「あんなに走りたがるんなら社会人レースの方でも行けばいいものを、あんな地位にまで上り詰めちまったらなぁ…」

 

そう言いながら遠くを見つめる彼の目はどこか悲しげだった。

その日以来、僕らが彼らの姿を再び見ることはなかったが、あの日のことは今でも鮮明に覚えている。

あの、楽しげに走っていた姿を…覚えている。

 

 

家の業務をあれこれしながらも、時折ふと走りたくなる時がある。

どうしようもなく脚が疼くというか、走りたい気持ちを抑えることができなくなるのだ。

だからそんな時は少しだけ、バレないように家を抜け出して誰もいない良さげなところで走ることにしていた。

もちろん普段軽く走っている家の模擬レース場のような整備されたコースとは違い、石段を駆け登ったり不安定な山の中を駆けたりなど、もはや野生に戻ったかのような感覚で。

そしてその日もそんな風に誰にも内緒でトレーニングをしていたのだが……。

 

「危ないからやめろ」

「ウッス」

 

偶然出会った友人に感づかれ、あえなく撃沈。

「お前脚のことで散々お前んとこのガキ共に心配されてんだろ、もう歳なんだから」と説教されつつ、「俺が監視してる時は走っていい」とルールが設けられて。

「つっても俺だってそんなしょっちゅう来れるわけじゃねぇぞ」と言いながらも定期的に来てくれるようになったのである。

…だが、その時はまだ知らなかったのだ。

僕が誰かの人生を一変させる存在になるなんてことを。

 

「また負けたー!」

「クソッ!なんで勝てねェンだ!!」

 

ある時出会った、まだトレセン学園に入学する歳でもないウマたちと軽く併走して、結構スピードを落としたのだけどそれでも勝ってしまった。

さて、どうフォローしようかと思っていたところ、

 

「次はトレセンに入ってからだ!」

「ん!?」

「そんなに強ェんならトレセンに行くんだろ!?それまで次の勝負は保留ッてコト!!」

「ん…、????」





僕:
シルバーバレット。
不意に走りたくて走りたくてたまらない時がある御歳が爺なウマ。
なのでその時はマブダチ監視の元、爆走している。
がしかし、そのことがバレたら自分の脚を心配する子どもたちに大目玉を喰らうのが確定なので必死に隠しているとか…。
でもそれはそれとして併走したトレセン学園入学前のチビウッマたちのプライドに燃料を注ぎ込んだりする。

SS:
僕のマブダチ・サンデーサイレンスさん。
走りたがりな僕の監視役をしている。
が、トレセン入学前のチビウッマたちを毎度毎度焚き付けていく僕を見ては「またやってるよ」と呆れている様子。
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