さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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『運命』なんてモンじゃない。


"必然"

僕の名前は白峰透。

どこにでもいる騎手だ。

それなりにいろいろな馬に乗らせてもらったけど八大競走には手が届かないまま今まで来ている。

諦めたらいいのかもしれないが、そう決断するのは時期尚早のような気がしてズルズルと…。

そんなある日、

 

「お前に任せたい馬がいるんだ」

「はぁ、」

 

テキに呼び出されてそう告げられた。

そして新馬戦に出走する何頭かの馬に引き合わされたのだが、

 

「あの…」

「ん?」

「あの馬、なんて名前ですか」

「どれだ?」

「あそこです。あの、隅にいる小さな、黒い…」

「あぁ?アイツか?アイツはなぁ、」

「あの馬がいい」

「あ゛?」

「あの馬を逃したら僕は一生後悔する。

すみません、テキ。

…僕をあの子に乗らせてください」

「お、おいおい、ちょっと待ってくれ!」

 

その馬が目に入ったとき、雷に打たれたように感じた。

あの馬じゃなくちゃ駄目だと、あの馬を僕は待っていたのだと半ば無意識に察した。

テキは僕を説得しようとしたけれど、

 

「お、おい!」

「あの子がサラ系だとかなんだとかそういうのは関係ありません。

あの子が走らないなんて世界の損失ですし、まず僕がそれを許せない。

あの子は僕の『運命』です、『宿命』です。

僕のために生まれてきてくれた子です。

だからお願いします、お願いします灰方(はいかた)さん」

 

恥も外聞もなく、テキに土下座した。

もうあの子以外要らないんです。

もうあの子以外目に入らないんです。

僕は魅せられてしまった、()()()()()()()()()

あの、静かな黒い瞳に。

 

「あの子を、シルバーバレットを僕にください」

 

 

「バレット」

 

レースの前、気を落ち着かせている彼に近づくと、ゆるくいなないて僕を受け入れてくれる。

ぎゅう、と抱き締めればすりすりと擦り寄って。

彼は僕以外にはここまでしないらしい。

したとしても頭を撫でさせるために首を下げるくらいだとか。

 

「撫でていいかな?」

 

そう問うと静かではあったが、彼の動きで了承されたと分かった。

それが分かると耳を触らせてもらったり、脚の筋肉の部分を撫でたり、…やっぱりキミの毛並みはどれほど撫でても飽きないなぁ。

そしてスキンシップの最後にメンコの中に手を差し込んで、注意深く、彼の火傷跡を撫でる。

火傷跡のでこぼこを愛でるように、慈しむように、ゆっくり、ゆっくりと。

 

「…痛くないかい?」

 

今日は雨が降るらしい。

そんなことを思い出してそう聞くと彼は「大丈夫さ」という風にいなないて、ぐいと顔を僕に押し付けた。

 

「そうか」

 

そろそろ時間らしい。

いつものルーティーンを終わらせてキミの背に乗る。

 

「僕とキミに敵なんかいない。

でもまぁ、…楽しんでいこうぜ相棒」

 

キミだけに聞こえるようにそう小さくささやいて。

僕のそのささやきにキミも小さくいなないた。




ヒトミミから見たすべてのはじまり。

騎手くん:
本名白峰透。
僕と出会ったときに騎乗したくて土下座しかけたと世間では有名だが実は本当に土下座している。白峰おじさんの名誉のために調教師の灰方(はいかた)さんが土下座しかけたと事実を歪めてくれた。
僕に魅せられてるし相思相愛。皇帝と大僧正みたいな感じ。もしかするとそれ以上かもしれない。
僕を『運命』と呼んで憚らない系騎手だし、周りも「アンタほどの人がそう言うなら…(だって事実だし…)」みたいになってる。

僕:
シルバーバレットという名前のウッマ。白峰おじさんが大好き。
火傷跡は実質プライベートゾーンな模様。
実のところ体を触られるのはあまり好きではないが白峰おじさんにだけは『どこ触っても・どれだけ触ってもいいよ♡』している。(頭や首を触られるのはファンサみたいなものだから大丈夫らしい)
通常、他人に見せることを嫌がる火傷跡も白峰おじさんにだけは好きなだけ見ていいよ、好きなだけ撫でていいよと許している。
某調教師さんとゴルシとは違い、白峰おじさん相手ならたぶんキスも許すんじゃないか、というか普通に受け入れるんじゃないかなコイツ。

テキ:
灰方(はいかた)さん。
はじめは僕が"サラ系"だからと消極的だったが白峰おじさんと出会い、快進撃を続けていく姿に徐々に魅せられていく。
最終的に脳を丸焼きにされる調教師さん。
『シルバーバレットが最強です』ってずっと言ってそう。
しかし火傷跡は白峰おじさんほど長時間見せてもらったことはないし、火傷跡の部分を撫でようとしたらプイップイッ!(頭ブンブン)された過去がある。
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