こんなに綺麗なものを、よくも。
ホワイトリリィは誰も彼もが夢中になるほどの美人だ。
だがしかし、幼い頃からその見目とは裏腹に女傑であったため、周りから「リリィちゃんは…ねぇ?」と。
そんな扱いを受けてきては…気づけば。
「…オレのことを好きになるやつなんているわけないだろ」
「誰があんな男女と!」とか。
「いくら美人でもアイツだけはないよ」とか。
「自意識過剰は、結構恥ずかしいと思うぜ?」と。
そんな人生を歩んできたのだ。
ホワイトリリィ自身もまた、喋ることとは裏腹に言われたことがなかなか頭から離れないからか。
「……」
気づけば家に引きこもりがちな淑女になっていた。
買い物は父であるホワイトバックが基本何とかしてくれるので、ホワイトリリィが町に出るのは月に一度くらい。
それも、父が一緒に来るので。
「はぁ……」
ため息をひとつつくと、ホワイトリリィはまた本に目を移す。
そんな時だった。
「あ、いた」
「?」
そんな声とともに現れたのは、一人の青年だった。
「えっと……どちら様ですか?」
「……あ、そうか。まだ俺とアンタは初めましてだったか」
「あ……?」
青年はそう言うと、ホワイトリリィの隣に腰掛ける。
この家の敷地にここまで普通に入り込んでいるのに、本来なら父を呼んで来るべきなのかもしれないのに。
「あの、町へ行くならあちらの道を「知ってる」」
「あぁ!父を呼びましょうか?それが……一応身分のハッキリした方でないと中に入れられない決まりがありまして……」
「いや、お気遣いは結構だ。それより本題なんだがな、俺が話したいのはアンタだよ。ホワイトリリィ、綺麗な人?」
「……っ!」
まだろくに話してはいなかったが、すぐに分かった。
この人は自分の容姿をなにかと揶揄する人たちとは違うらしいことを。
いやむしろ……これは素直に褒めている、ような気がする。
「あの、お言葉を返すようですが、あなたはわたくしの何をご所望ですか?」
「そんな身構えるなって。ただ少しお近づきになりてくてさ」
「……」
言葉こそ軟派だが、その目はひどく真剣で。
堪らず後ずさってしまいそうになるほどには。
「あの、お名前をお伺いしても良いでしょうか?」
「ん?あぁ、そうだな。俺は…ヒカルイマイ」
「……ではヒカルイマイさん。わたくしは、ホワイトリリィと申します」
「あぁ知ってるよ。アンタは有名だ」
「……」
「いやすまない。気を悪くしたなら謝ろう。だがな?これは俺の本音だ。アンタは美人だよ、本当に」
「っ!」
ホワイトリリィはまた後ずさる。
ここまで素直に彼女を褒めるのは実の父ぐらいなもので。
「あ、いや……」
ホワイトリリィのその表情を見たヒカルイマイはすぐさま謝罪の言葉を口にしようとする。
どうやら彼は決して女性の容姿をおもちゃにするような人間ではないらしい。
その事実がまた彼の人となりの良さを感じさせるように思えて。
「……ごめんなさい。そう言われるの、慣れてなくて」
「いや……こちらこそすまない」
このやり取りを境にして、二人は徐々に距離を縮めていくことになる。
いや、それはもう夫婦のように仲を深めていって……。
ならば水を与えるだけ。
だから、───歯噛みしていろ。