離せない、離さない。
あれは、本当に一目惚れだった。
「───────」
一目で、心を奪われた。
小さく、華奢な背。
ふとした瞬間に消えてしまいそうな希薄な気配を持つ彼女に、半ば魂から。
「……はあっ、はあっ」
慢心も、少しはあった。
見惚れていたことも、理由の一つではあるだろう。
だけど、だけども。
ほんの少しの『理由』があっても、負ける己ではないはずなのに。
ほんの少し、競り負けた。
「……」
結果。
自分を負かした彼女を、欲しいなあと思った。
少しだけ自分に目を向けた彼女に、いつかは自分だけをずっと見てほしいと。
その、淡い感情の正体に。
「─────」
その時の僕は、気付けなかった。
*
「は、はあっ」
走る。走る。
「っ、は」
僕はただ、あの場所から離れようと走っていた。
……だって、そうしないと。
「なんで、あんなコト」
なんで、あんなコトをしてしまったのかが解らないから……!
ああもうっ、どうして僕ってばあんっっっなに恥ずかしいコトをしたんだろう……!!?
「ううううぅぅぅ…………!」
唸りながらも足が進む。
だって、だって……っ!
いくらなんでも『僕のモノになれ』はないだろう!?
いやもちろん彼女のことが好きだけどさ!
あ、あんなコト自分が言うなんて思わなかったんだよぅ……!
「これからどんな顔してあの子に会えばいいんだろう……」
ああでも僕が逃げてる間に色々決まったらどうしよう……!!
せめて彼女のチームの確認をして、止めてもらうしか……!!!
「ん?あれ?」
なんだ?
後ろからすごい足音が聞こえてくる。
「この音は、まさか」
嫌な予感がして走り出そう……として。
あ。
やば、足つった……!?
「あいたたたっ!?」
「やっと追いついた!」
あうう、こんな時に……!
でも、でも!ここで捕まるわけには……!!
「もう、どうして逃げちゃうの?」
……。
「……え?」
恐る恐る振り返る。
するとそこには、さっき僕が『僕のモノになれ』と言った彼女が笑っていて。
たまらず引きつった笑みを返せば、「キミから言われるなんて思わなかったな」と、そんな呟きが。
「─────」
あ、あ。
「あの」
「うん?」
「……さっきのは、その」
「さっきのって?」
う。
「だから、その……僕のモノになれっていう……」
ああもう! 二度も言わせるな!!
「ああ。うん。そうだね」
「っ!」
彼女は笑って、それから。
『僕のモノになって』と、そう続けてから。
……うう。
結局、僕は彼女に逆らえない。
それに、諦められない。
「好きだよ」
だから、きちんと言葉にした。
それが一番の手段だと知っているから。
「……うん。私も好きだよ」
そう言ってもらえて安心する反面、不安で頭がグルグルする。
……ああもうどうしようどうしよう!
だって僕ってばいつも後手なんだ!
こんなんだから告白だって立場が逆転しちゃうんだよ……!
「それで、返事は?」
お互いに両片思いだったみたい。