さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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離せない、離さない。



本能から

あれは、本当に一目惚れだった。

 

「───────」

 

一目で、心を奪われた。

小さく、華奢な背。

ふとした瞬間に消えてしまいそうな希薄な気配を持つ彼女に、半ば魂から。

 

「……はあっ、はあっ」

 

慢心も、少しはあった。

見惚れていたことも、理由の一つではあるだろう。

だけど、だけども。

ほんの少しの『理由』があっても、負ける己ではないはずなのに。

ほんの少し、競り負けた。

 

「……」

 

結果。

自分を負かした彼女を、欲しいなあと思った。

少しだけ自分に目を向けた彼女に、いつかは自分だけをずっと見てほしいと。

その、淡い感情の正体に。

 

「─────」

 

その時の僕は、気付けなかった。

 

 

「は、はあっ」

 

走る。走る。

 

「っ、は」

 

僕はただ、あの場所から離れようと走っていた。

……だって、そうしないと。

 

「なんで、あんなコト」

 

なんで、あんなコトをしてしまったのかが解らないから……!

ああもうっ、どうして僕ってばあんっっっなに恥ずかしいコトをしたんだろう……!!?

 

「ううううぅぅぅ…………!」

 

唸りながらも足が進む。

だって、だって……っ!

いくらなんでも『僕のモノになれ』はないだろう!?

いやもちろん彼女のことが好きだけどさ!

あ、あんなコト自分が言うなんて思わなかったんだよぅ……!

 

「これからどんな顔してあの子に会えばいいんだろう……」

 

ああでも僕が逃げてる間に色々決まったらどうしよう……!!

せめて彼女のチームの確認をして、止めてもらうしか……!!!

 

「ん?あれ?」

 

なんだ?

後ろからすごい足音が聞こえてくる。

 

「この音は、まさか」

 

嫌な予感がして走り出そう……として。

あ。

やば、足つった……!?

 

「あいたたたっ!?」

「やっと追いついた!」

 

あうう、こんな時に……!

でも、でも!ここで捕まるわけには……!!

 

「もう、どうして逃げちゃうの?」

 

……。

 

「……え?」

 

恐る恐る振り返る。

するとそこには、さっき僕が『僕のモノになれ』と言った彼女が笑っていて。

たまらず引きつった笑みを返せば、「キミから言われるなんて思わなかったな」と、そんな呟きが。

 

「─────」

 

あ、あ。

 

「あの」

「うん?」

「……さっきのは、その」

「さっきのって?」

 

う。

 

「だから、その……僕のモノになれっていう……」

 

ああもう! 二度も言わせるな!!

 

「ああ。うん。そうだね」

「っ!」

 

彼女は笑って、それから。

『僕のモノになって』と、そう続けてから。

……うう。

結局、僕は彼女に逆らえない。

それに、諦められない。

 

「好きだよ」

 

だから、きちんと言葉にした。

それが一番の手段だと知っているから。

 

「……うん。私も好きだよ」

 

そう言ってもらえて安心する反面、不安で頭がグルグルする。

……ああもうどうしようどうしよう!

だって僕ってばいつも後手なんだ!

こんなんだから告白だって立場が逆転しちゃうんだよ……!

 

「それで、返事は?」





お互いに両片思いだったみたい。
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