さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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思い返せば確かにそうだったよねって。



かつての

俺の家には家政婦さんのように時々手伝いに来てくれる親父の知り合いがいる。

 

「おかえり、シップくん」

 

シルバーチャンプというそのウマは、年齢的に言えば親父の一歳下のはずだけどそうは見えない。

だってシワらしいシワとか見えないし肉体だって華奢ではあるけど筋肉はちゃんとしている。

 

「ご飯作ろうか?」

「ん」

 

シルバーチャンプ-チャンプさんの作るご飯は美味い。

幼い頃から胃袋を掴まれているため、今からチャンプさんの作るご飯が食えると考えるとたまらず涎が出てきた。

 

「休みなんだから仲良しの子と何処か遊びに行けばよかったのに」

「ゴルシちゃんもたまには帰った方がいいかなって思っただけだぜ☆」

「そう」

 

わざとふざければくすくすと笑われる。

チャンプさんは普段の物静かな姿に対して親しみやすくて優しい。

 

「なぁチャンプさん」

「なぁに?」

「あとでトレーニング付き合ってくれない?」

「…お父さんに付き合ってもらえば」

「親父が付き合うわけねーじゃん。めんどくせぇって言われて終わりだよ。…だから、な♡?」

「……分かった」

 

昔から子どものお願いには弱いチャンプさんは少し渋ったけれど結局は了承してくれた。

それに機嫌をよくした俺は鼻歌を歌いながらトレーニング…という名の。

 

「トレーニングじゃなかったっけ?」

「トレーニングだろ、()()も」

 

トレセン学園に入った頃から考えてた。

んで自分が俗にいう上澄みも上澄み側だと自覚した時から夢見てた。

それには…チャンプさんの実子である"あの人"と走れなかったことも理由なのだろうけど。

 

「…もう引退してだいぶ経ってるから期待しないでね」

 

 

(うそ、だろ…?)

 

たしかにチャンプさんを慮って手ならぬ脚を抜いてたさ。

チャンプさんは怪我で引退したウマだから無理をさせて怪我を悪化させてはと。

けれど、

 

「…シップくん、大丈夫?」

 

余裕で抜かされた。

それも俺よりずっと後方にいたはずなのに爆発したような音が聞こえたと思ったら隣にいて。

 

「……やっぱチャンプさんはすげぇな」

「……そうかな?」

 

照れたように頭を搔く姿に、そういえばそうだったと。

このウマ、曲がりなりにも凱旋門賞二着の競走バだった。

しかも最後方からとんでもない脚で突っ込んできてハナ差の二着。

ほんの数センチで、門をくぐり抜けることができなかった、本人曰く「凡人」。

 

(これの、どこが)

 

こんなのされたら、ちょっとゴルシちゃんも自信なくしちまいそうだ。

でもまぁ、

 

(チャンプさんに憧れるヤツらの気持ち、分かったような気がする)





無事焼いた模様。
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