さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ねぇ、誰か。



渇望

チーム:アルデバランのリーダーであるシルバーバレットはただいま現在トゥインクルシリーズを無期限休止中だ。

本来ならドリームトロフィーリーグに移籍してもおかしくない戦績だが、当の本人がそうしているのだから外野にはどうする権利もなく。

 

「時が来たら現役復帰するさ」

 

チームメンバーの面倒を見つつ、シルバーバレットはそう言う。

言外に望まれる望みに誰もが「そんなの現れるわけがない」と思うが。

……そう思っていないと、やってられないのか。

 

誰もが渇望する"星"。

ギラギラと輝く、希望であり呪い。

競走バであるなら、誰しもが一度は焼き焦がされる。

己の弱さ、その罪深さに。

 

『どんな選手にも真摯に教えてくれる』

『理想的な選手』

 

語られるそんな要素は本質を捉えきれていない。

それは本性を覆い隠す仮面だ。

あの、シルバーバレットの本質は───。

 

 

誰も、僕に届いてくれなかった。

それは、孤独だった。

影すらも踏まれなかったレースにちょっとした失望を覚えたのと同時に、それでも諦めきれなくて。

 

(なら、───育てよう)

 

まるで、自分のような。

孤独な、最強を。

誰も追いつけなくて、介在できなくて。

ただそこにある。

必勝にして無敵の、絶対の。

 

 

『トゥインクルシリーズに新星現る!』

そんな見出しが躍るスポーツ新聞。

『無敗の三冠か!?』と銘打たれたその記事には、ある一人のウマ娘の写真が載っている。

 

「……」

 

それを、シルバーバレットはどこか嬉しそうに見やる。

 

「ようやく、か」

「どうかしましたか?」

「いいや、」

 

不思議そうに自分を見やる副官にシルバーバレットは誤魔化すように笑う。

それに副官は訝しそうにしたが、シルバーバレットに話すつもりがないと悟ると視線を窓の外に移した。

 

「思ったよりも、掛かったなぁ」

 

ポツリとこぼれた本音を副官は聞かなかったフリをする。

当のシルバーバレットがそれ以上話すつもりはないようで無言を貫いたからだ。

 

 

「本当はさ」

「見込みのある子はそれなりにいたんだよ」

「でもさ、あの子たちには大切な相手がいたからね」

「だから────奪い取るなんて可哀想じゃない」

 

故に。

たった一人で、孤独な最強を。

誰も共にあれない最強を。

そんな相手なら。

 

「僕と、いっしょ」

 

……そう、シルバーバレットは笑った。

 

「……なんてね」

 

その笑顔を見た誰かがいたなら。

それはまるで、狂人の笑みだった。

 

「はやくはやく、成長して欲しいねえ」

 

ひとりは寂しい。

寂しい、寂しい、寂しい、寂しい…。

 

「…冗談だよ」





ひとりぼっち。
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