さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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隔絶。



善意だったのに

そこには、バケモノがいた。

 

(───アレは、なんだ?)

 

ゲートを出た瞬間、現れた"ソレ"に周りの同族や上に乗っているニンゲンたちも恐慌に陥っているのが分かる。

だが、

 

(え、?)

 

たった一頭とひとりだけが、まるで"ソレ"が見えていないかのように。

すうっ、と俺たちを導くように進んで行くものだから。

慌てて追おうとするものの、──ゾッ。

一歩を踏み出そうとするごとに、"ソレ"に怖気付いてしまう。

『お前じゃない』とでも言うかのような、いや、もっと言えば『関わるな』とでも言いたげな空気が"ソレ"から放たれる。

…………だけどどこか温かい雰囲気の"ソレ"に心惹かれたりもして。

怖いのに、近づきたいような、そんな気持ちにさせるのだ。

そして、その空気は俺たちを導くニンゲンからも感じられた。

だからか、俺たちは皆一様に前を走る彼らの後を追っていく。

まるで、そうすることが正しいかのように。

けれど、

 

(あ、)

 

すぐに気がついた。

前を往く彼らの姿が…霞みがかり、まるで"ソレ"みたく。

それを認識した瞬間、体に走る怖気に打ち勝つような感情が膨れ上がっていく。

そうして、俺は自分でも信じられない程に強い意思を以て前へ一歩踏み出した。

何故なら、

 

(───死なせちゃ、いけない!)

 

このまま行かせれば、彼らは死ぬ。

持っていかれる。

アレは───きっと見定めなのだ。

自分と遊べるような、そんな相手の見定め。

そして、自分たちの"格"と、相手の"格"を測るための試金石。

ならば!

そんな危険を孕んだ相手に彼らの命を差し出してはならない!

 

(彼らを……守らなくちゃ!!)

 

そうして、俺は初めて自身の持ち得るモノを差し伸べて祈る。

 

(神様ッ……!! どうか彼らを守り、いやっ……救える強さをくださいっ!!)

 

どうやら他の馬も同じ穴の狢になったらしい。

誰もが前を往く彼らを救おうと、普段では考えられないような力を発揮して、

 

『ひッ!?』

『やっぱヤバいッ!!』

『ッ……!?』

『くそおおッ!!』

 

次々と"ソレ"の放つ圧に負け、倒れていく同胞たち。

……でも、俺はまだ前へと進める。

 

(……っ!)

 

そして、ついにその"ソレ"の目の前にまで辿り着く。

 

『───おい』

 

だから俺は。

 

『それは────ダメだろう』

 

瞬間、掻き消える。

そこでようやっと、ゴールに至ったのだと、そう理解した。

 

『はあっ、はあっ……!!』

『だああっ! し、しんどいっ!!』

『もお〜、なんで私がこんな目にぃ〜……』

 

"ソレ"が去った後。

"ソレ"が暴れ回った後の荒れ果てたレースに、俺たちとニンゲンたちはグッタリとしていた。

けれど、

 

『な……い……』

 

───え?

 

『い……ない』

『……いない』

『いないッ!!!』

『見えたのに、見えたのに!!』

 

つんざくような、泣き声が……。





やっと見えた。
やっと会えた。
けれど。
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