甥っ子組逆行世界線。
アレを天才と呼ばずして、誰を天才と呼ぶのだろう。
入学以来主席で、文武両道。
少々コミュニケーション能力に難があるのが欠点だが、それも彼のあらんばかりの才能で帳消しになる。
それほどまでに────白峰遥という騎手は"天才"であった。
*
白峰遥のデビュー戦は、所属厩舎である灰方勤厩舎の老馬の騎手だった。
デビュー戦は勝っている。
だがそこからが上手く進めない。
歳の割にはよく頑張っている方。
そんな評価をもらう馬の騎手。
新人に任せるに適任の、穏やかで扱いやすい馬。
だが、
「やはり天才か、白峰遥今ゴールイン!」
最低人気に近いその馬を、軽く勝利させた。
普段なら考えられない末脚を繰り出させ、前を走る馬達をごぼう抜きにしての完勝。
わずかアタマ差の決着ではあったが、白峰遥は華々しいデビューを飾った。
その次も、またその次も、白峰遥は期待以上の走りを見せた。
「白峰遥がまたもや! 二着との差をさらに広げた!」
重賞レースでも危なげなく勝つ。
GⅠレースでの騎乗はまだないが、GⅡ・GⅢの重賞レースでの勝利数だけで言えば既にトップクラス。
もうその頃には次から次へと騎乗依頼が殺到していた。
がしかし、
「やはりシルバーチャンプです問題なし!白峰遥まず一冠!」
俗にいう『運命の出会い』というやつを果たした結果。
「もちろん、次はダービーです」
ですが───ダービーはダービーでも、
「英ダービーへ向かいます」
*
天才だった。
彼は、天才だった。
はじめてレースでその背を見た時、こんなことができる新人がいていいのかと、本気でそう思った。
GⅠではないながらもそこそこの強豪馬が揃った中、彼の騎乗した馬は後続に3馬身の差をつけて勝利した。
その後も偶然じゃないとでもいうかのように、GⅠを総なめにするその未来が見えるような走りを白峰遥は行ったのだ。
そして迎えたクラシック第一冠・皐月賞。
彼は、天才だった。
「やはりシルバーチャンプです問題なし!白峰遥まず一冠!」
『天才』。
そう呼ばなくてなんという。
どれだけ度胸があっても普通は取らない策。
それを取れたのは、彼が騎乗馬であるシルバーチャンプの力量をキチンと把握していたことと───シルバーチャンプを信じているからゆえ。
自分はあれだけの信頼を向けられるか、そして応えてもらえるか。
まったく別次元の、格が違う騎乗。
そしてだからこそ、改めて知ったのだ。
────ああそうか、これからこの天才を相手しなきゃいけないのかと。
「……」
それはかつて見た"鬼"によく似ていた。
元から天才が未来の記憶と技量をもってたらそりゃあね?(周りからの目は見ないこととする)