さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

1211 / 1416

またもや甥っ子組逆行世界線。



人馬ともに焼いてる

白峰遥は己を天才だと思っていない。

多くの人からそう賞賛されようとも、彼が思う"天才"はまだまだ遠いものであるからして。

 

(あぁ……)

 

周りから「白峰遥にしかできない」と唸られる騎乗をしようにも、彼の心は晴れない。

『白峰遥は天才だ』という評価を、誰もが認めようとも、彼はそれを認められない。

 

「また負けた」

 

その理由は単純明快。

"白峰遥は天才ではない"からだ。

 

(僕は、いつか届くだろうか)

 

その答えに、彼は未だ辿り着けないでいる。

 

「また負けた」

 

その答えは、もうずっと前に出したはず。

 

(僕は……)

 

しかし、その答えは今も尚変わらないままである。

 

(天才なんかじゃない)

 

それは、

 

 

白峰遥が騎手を志したきっかけは、"天才"がいたからで。

その"天才"の名は白峰透。

白峰遥の伯父であるその男は、それまではまぁ強い騎手…という評価であったが。

 

『これはもう、日本も世界も届かない!』

 

たった一人と一頭だけ。

白峰透と、ある一頭だけ。

すべてを置き去りにして、引きちぎって。

誰もがその姿に熱狂する。

 

「…すごい」

 

それと比べると。

今の自分は、

 

(あそこまで、熱狂させられない)

 

今の自分は、

 

(あんな風に、圧倒的に勝てない)

 

「また負けた」

 

白峰遥は天才ではない。

"天才の白峰透"と比較すれば、その差は歴然。

その事実が、彼の心を蝕むのだ。

 

「また負けた」

 

 

『白峰遥が騎手を志したきっかけは、"天才"がいたからで』

 

そんな言葉を、よく耳にする。

 

『僕は天才じゃない』

 

そんな言葉も、よく耳にするのだ。

 

「彼は……」

 

しかし周りは、そんな彼の言葉を否定する。

なら、お前に敵わない俺たちはどうすればいい?と。

それが血筋から来る才覚と陰で囁くことももうできないほど、お前が残している戦績を言ってみろと。

日本での勝ち鞍こそ他のトップジョッキーと比べると少ないが、それに反比例して海外での勝ち鞍は。

 

「あぁ……また負けた」

 

それは紛うことなき"天才"が残してきた戦績。

 

(彼は、まだ認められないのか)

 

その差は、もうずっと前から、変わっていない。

変えようとしても離れていく。

 

(天才じゃない?)

 

その差は、今も変わらず周りの心を蝕む。

 

『彼は……』

 

その差が、もうずっと前から、見えない。

変えられない現実が彼の目を、振り返らせない。

 

(比べられないほどに遠く、手の届かないところに……行ってしまう)

 

嗚呼、

 

(どうして)

 

こんなの、意味なんかないじゃないか。

どれだけ叫んでも、白峰遥に届きはしないのだから。

ならば諦めればいいのに。

そうすれば、いいのに。

 

「あぁ……」





周りとの温度差!!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。