またもや甥っ子組逆行世界線。
白峰遥は己を天才だと思っていない。
多くの人からそう賞賛されようとも、彼が思う"天才"はまだまだ遠いものであるからして。
(あぁ……)
周りから「白峰遥にしかできない」と唸られる騎乗をしようにも、彼の心は晴れない。
『白峰遥は天才だ』という評価を、誰もが認めようとも、彼はそれを認められない。
「また負けた」
その理由は単純明快。
"白峰遥は天才ではない"からだ。
(僕は、いつか届くだろうか)
その答えに、彼は未だ辿り着けないでいる。
「また負けた」
その答えは、もうずっと前に出したはず。
(僕は……)
しかし、その答えは今も尚変わらないままである。
(天才なんかじゃない)
それは、
*
白峰遥が騎手を志したきっかけは、"天才"がいたからで。
その"天才"の名は白峰透。
白峰遥の伯父であるその男は、それまではまぁ強い騎手…という評価であったが。
『これはもう、日本も世界も届かない!』
たった一人と一頭だけ。
白峰透と、ある一頭だけ。
すべてを置き去りにして、引きちぎって。
誰もがその姿に熱狂する。
「…すごい」
それと比べると。
今の自分は、
(あそこまで、熱狂させられない)
今の自分は、
(あんな風に、圧倒的に勝てない)
「また負けた」
白峰遥は天才ではない。
"天才の白峰透"と比較すれば、その差は歴然。
その事実が、彼の心を蝕むのだ。
「また負けた」
*
『白峰遥が騎手を志したきっかけは、"天才"がいたからで』
そんな言葉を、よく耳にする。
『僕は天才じゃない』
そんな言葉も、よく耳にするのだ。
「彼は……」
しかし周りは、そんな彼の言葉を否定する。
なら、お前に敵わない俺たちはどうすればいい?と。
それが血筋から来る才覚と陰で囁くことももうできないほど、お前が残している戦績を言ってみろと。
日本での勝ち鞍こそ他のトップジョッキーと比べると少ないが、それに反比例して海外での勝ち鞍は。
「あぁ……また負けた」
それは紛うことなき"天才"が残してきた戦績。
(彼は、まだ認められないのか)
その差は、もうずっと前から、変わっていない。
変えようとしても離れていく。
(天才じゃない?)
その差は、今も変わらず周りの心を蝕む。
『彼は……』
その差が、もうずっと前から、見えない。
変えられない現実が彼の目を、振り返らせない。
(比べられないほどに遠く、手の届かないところに……行ってしまう)
嗚呼、
(どうして)
こんなの、意味なんかないじゃないか。
どれだけ叫んでも、白峰遥に届きはしないのだから。
ならば諦めればいいのに。
そうすれば、いいのに。
「あぁ……」
周りとの温度差!!!!