それは俺自身も。
思えば、俺はお前のことを何も知らなかった。
どんな音楽が好きか、ましてやどんな奴が嫌いかなんてことも。
お前ははぐらかすのが得意だったから、上辺を貼り付けるのが上手かったから、気づいた時にはすべてがなぁなぁになっていた。
なぁ。
お前の犠牲にその価値はあったのか?
あれだけお前の心を、体を、傷つけて、それを知ろうともしない奴らに報いる価値はあったのか?
お前の勝ちを当然だと決めつける奴らに報いる価値はあったのか?
お前はあいつらの道化にならなくてもよかったんじゃないか?
お前は幸福であるべきだった。
あれだけ傷ついて、傷つき通しで、最後は消費されて終わりなんて、そんな、そんな。
あまりにも、救われない。
お前にはその権利はあったはずなのに。
俺だってそれを望んでいたはずなんだ。
それでも俺が身を引いたのは、こんな結末をみんなが望んだなんて信じたくはなくて、お前の背を押せばやっといつも辛そうなお前が解放されると安堵する気持ちもあって。
「あ、」
でもお前は解放されてなんていなかった。
お前はただ、俺も含めて、みんなのために自分を犠牲にしていたんだ。
そんなのってあるか?
俺が喜んでくれるから?
なんでだよ?
なんでそんなことしたんだよ?
……いや、わかってる。
お前は、無垢な子どもだ。
これができたって、親に褒めてもらいたい子どもだ。
親の期待に応えようとする子どもだ。
だって、俺が褒めるたびにお前は喜んでいたんだ。
まさかあの拍手喝采が、愛憎の混じった好意を隠そうともしない奴らの善意に塗れた拍手だったなんて思いもしなかったんだ。
「あ、あ」
俺は、俺は馬鹿だ。
本当に馬鹿だ。
なんで気づかなかった?
なんでわからなかった?
お前が俺のためだけに行動したとでも思ったか?
そんなわけがあるか!
お前にとって俺はなんだった?
自分のためと、要りもしない善意を振りかざす…アイツらと同じか?
俺を気遣ってくれるお前が。
こんな俺に優しくしてくれるお前が。
…そんなわけない。
俺を見限るのなんて簡単なことのはずだ。
だって俺ときたら、いつだって自分のことしか考えられていなかったから。
ああ、ああ……!
でも、お前は!
そんなにも優しいお前だから!
やっぱり俺は馬鹿だ。
気づかなかった、わからなかった、気づこうともしなかった!
「先輩……?」
ごめんなぁ……ごめん……ごめんな……っ!
なんで気づいてやれなかったんだろう?
なんでもっとよく見てやれなかったんだ…。
「ごめんな…」
けれどお前は穏やかに笑むばかり。