さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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逆行軸。



どこまで行くか

俺は俺の末路を後悔していない。

だって元は体たらくの俺が最大限結果を残せたのだ。

"前"の記憶というアドバンテージと引き換えに足の脆さが生まれつき重度のものとなったのはいささか誤算だったが誤魔化すのは"前"の生も含めると年季が入っているので問題ない。

体たらくの俺が、環境や要因を言い訳にせずとも、あれだけの結果を叩きだせたのだ。

 

「ちなみにアンタは?」

「……僕も後悔してないよ」

「そうかい」

 

なら良いさ、と俺は再び前を向く。

 

「ところで、その……僕はこれからどうなるんだろう?」

「……さあな」

 

俺はそう答えるしかなかった。

 

「え……」

「まあ……なんだ。俺の予想じゃ、アンタは引く手数多のトレーナーになるんじゃないか?だって曲がりなりにも俺と世界中を巡ってGⅠを獲ったわけだ」

 

このトレーナーは"前"から…いやもっと前から続投な古馴染み。

もはや『運命』かなんかではないのかと勘繰ってしまうほど。

だからこそ、俺には自信をもって断言できる。

 

「え……いや、そうなのかな」

「ああそうだとも」

 

そしてこのお人好しがそんな俺と道を共にしてくれた最大の要因でもあるわけだが……今それを言うのは野暮というモノだろう。

 

「とにかくアンタはこの期に及び、たった一つしか答えが無い質問を口にするつもりはないだろう?」

「!…………そうだね」

 

"前"もこうだった。

この若造に魅せられていたアンタは、どうあがいてもこうだったんだろうな……と俺はひとつ息をつく。

俺はお前だったからここまで来れたのに。

その逆もまた、きっと。

だから……、

 

「なら、アンタはこれからどうしたい?どうなりたい?」

「僕は……」

「ああそうだとも」

 

俺はトレーナーの目をまっすぐ見て言う。

 

「その答えはもう、ずっと前から決まっているんだろう?」

「……うん」

 

"前"の俺が、『運命』を捻じ曲げてまで掴みたかったモノは、もうとっくにアンタの手の中さ。

そう……きっと最初からだ。

 

(お前と出逢ったあの日、俺の生は始まったんだ)

(だから、ありがとう。……今までも、これからも)

「俺はアンタがどんな答えを出すか、それを見届けるだけだ」

「そうか……」

 

トレーナーはそう呟くと、少し考え込んだ。

そして……やがてその口が開く。

 

「僕は……僕はね」

「ああ」

「僕は……いや」

 

トレーナーはそこで言葉を止めると、一度大きく深呼吸し、そして言った。

 

「俺は……キミにまた出逢えるように、キミのトレーナーに相応しい人になるよ」

「そうかい」

 

俺は、そう答える。

"前"は、『運命』に導かれて出逢った。

そして今、『運命』は自ら手繰り寄せた。

ならば、

 

「気長に待っておくかね」

 

俺はトレーナーの目をまっすぐ見て言った。

 

「ああ!」

 

トレーナーがそう答えた時、俺はやっとしっかと立てたような気がした。





だって、まだ終わりじゃないもの。
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