人気すぎるのも考えものですね。
シルバデユールは美しい。
いや、シルバデユールのきょうだいみな美しいが、その中でもいっとう母親であるシルバフォーチュンに顔立ちがそっくりなのがシルバデユールで。
『傾国』とまで評された母の面立ちが思春期を越えても損なわれず、むしろ年々その魅力を増していくものだから、シルバデユールの行く先々には常に人だかりができていた。
まぁそれはシルバデユールがアイドルデビューし、年々その知名度と人気を上げていっていたせいでもあるが。
「……」
清純であり、無垢であり、真摯。
あれほど完璧な
そう、昔から彼女はとても美しくて、今は輪をかけて美しくなってしまった。
それがいったいどういうことなのか、周りの人間は分かっていないのだ。
「──すまん、通してくれ」
どかっ、と無理矢理に道を開けさせて、ただでさえ熾烈な人垣を割って歩く。
「デユール」
まるでモーゼのごとく歩いていたシルバデユールが声をかけた己を認識し、少し表情を綻ばせ寄ってくる。
普段(アイドルの仕事以外は)あまり表情を動かさない彼女が少し笑んだだけで周りは卒倒したり鼻血を出したりの阿鼻叫喚。
それを気にせず、腕を組んで少しでも遠くに行く。
「た、たたた助かったよ、【心の叫び】」
「おー」
ようやく二人きりになって、"本当の"シルバデユールが顔を出した。
そうだ、シルバデユールというウマ娘は本当はこうなのだ。
臆病で、吃りがちで、人と話すのが苦手。
だのにアイドルの才能は……有り余らんばかりにあるのだから神様というやつは。
「今日も囲まれてたな」
「ひ、久しぶりに登校したからね。そ、それに、こ、こ、この前ライブもあったから」
へにょ…と笑うさまは先程までの凍てつくような美しい澄まし顔からは考えられないだろう。
実はシルバデユールは根っからインドア気質なので、人混みはあまり好かない。
だから校内にいる時(授業以外)は大抵屋上で寝そべっているか、空き教室の片隅で蹲っているのだ。
「……一応言っとくが、見に行ったからな」
「ししっ、知ってるよ」
「……そうか」
"あの"シルバデユールに個別ファンサを向けられるなんて自分くらいだろう。
…いや、シルバデユールの家族もいるか。
「そういや夏合宿行くのか」
「う、うん。と、トレーナーが、そ、その方がいいって」
「……そうか」
……なんか面倒なことになりそうだな。
生徒会がちゃんとしてくれればいいのだが。
オグリほどのブームは作らないとはいえアイドル業でのファンが多量だからなんか似たようなことになってそう。