さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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愛とはなんぞや。



昔の

かつて。

かつてシルバーチャンプは"仕事"にあまり乗り気ではなかった。

自分と"仕事"をしたいと思う人なんていないと思っていたのもそうだが、そもそもが人間不信気味で。

家族の前では取り繕っているけれど、その実は己がトレーナーと己が一身に信頼を傾ける先輩-ステイゴールドにしか心の内に踏み込ませない彼であるからして。

 

「そういうの、不誠実でしょう」

 

真剣に相手に向かい合えないことに自己嫌悪に陥っていたから。

そしてそれが一生治らないものだと知っていたから、"仕事"に積極的でいられるはずもなかったのだ。

己の弱さを自覚するシルバーチャンプにとって、己の弱さを自覚するようなその行為は、とてもじゃないが許容できなかった。

けれど。

けれど、今は。

今は。

彼は、この"仕事”を請け負ってよかったと心から思うのだ。

 

 

"仕事”は、シルバーチャンプのオーナー経由で持ってこられたものから始まった。

それはトレセン学園でも聞き覚えがある名家の名を冠した淑女たちとのお見合い。

シルバーチャンプの内実を知らないとはいえ、現役時代そういった浮いた話がないということはオーナーも知るところであったから、心配してオーナーが気を回したのだ。

そうして、…シルバーチャンプは丁重に断った。

お見合いで出会った彼女たちがシルバーチャンプにもったいないほどの美しい女性であったこともそうだが、そもそもが名家のご息女たちなのだ。

シルバーチャンプでなくとも、そもそも許嫁なり何なりいるだろうと。

……思ったのだが。

 

「こんにちはチャンプさん〜」

「アタシが会いたいって言ってるんだぞ?」

「今日も隈がありますね。分かりますよ?化粧で隠していても」

 

なんか三人で徒党を組んで迫ってきた。

ふわふわと穏やかな気性のメジロ。

強気でカリスマ性のあるシンボリ。

ムードメーカーと真面目なところが偏在するサクラ。

初めは相手も乗り気では無いと聞いていたはずなのに気づけばあれよあれよという間に外堀は埋められ、オーナーにまでフォローされて。

そしてその"仕事"を受けたところで気づいた。

自分が心の奥底では変わりたかったのだと。

嫌なら嫌だと断れたのだ、断ったほうが楽だっただろうに、それはしなかった。

これは絶対に口にはしないが、心のどこかで自分には縁がないと思っていた結婚という言葉がどうしても魅力的に思えたのも事実だ。

何故自分がそう思えるか自分自身でもわからないが……少なくともこれで変われる気はしていたから、良い機会だと思ったのだ。

……だがしかし、

 

「先輩落ち着いてください、威嚇しないで!!」





ゆっくりと知っていく模様(たぶん?)。
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