とはいえ急かないと逃げるんで…。
はじめは、まったくもって乗り気ではなかった。
たしかに自分はあの年齢になっても周りのように許嫁やら恋人がいなかったが勝手にセッティングするのはいかがなものかと。
しかも「いい子だから」と言われるだけで相手がどんな風貌だとか何だとかを教えてもらえないときた。
相手がどんなかは知らないが失礼にも程があると、
「よろしく、お願いします…」
その時までは、思っていた。
目の前に座すのは色白…というよりも血の気が薄い華奢な牡馬。
まだグラデーションがかかっているが美しい芦毛の髪色。
思わず固まってまじまじと見てようやく気がついた。
───シルバーチャンプだ。
かの有名な一族の、しかも最近大々的な結果を残したウマ。
がしかし引く手数多だろう彼がなぜ自分のような家柄だけが取り柄の、しかも幾分も歳上の女に、とは思ったがその時の彼があまりにも張り詰めたような顔をしていたので聞くに聞けず。
それからも幾度か会う機会がありその度に着々と思い出を積み重ね、やがて。
段々と自覚した想いは、どうやっても結ばれることはないだろうとすぐにわかった。
「……はは、」
彼は、誰かから向けられる気持ちを素直に受け取れない。
どうやっても、彼自身が捻じ曲げてしまう。
どれだけ真剣に告げようとも、「勘違いですよ」と下手な微笑みを向けられては何度だって分からせられた。
だから、
「「「チャンプ」」」
ジェットストリームアタックを仕掛けることにした。
同じ相手を想う同士、初めは少々敵対していたがこのままでは全員そろって負け組になると確信したために結託し、影に日向にあの手この手で彼を落としにかかる。
形振りなんて構ってられない。
「「「諦めるなんて思うなよ?/思わないでくださいね?/思ってます?」」」
自分たちに追い詰められた彼がひどく困惑した顔をする。
なんで自分がこんな目にあっているのか、まったく分かっていない顔だ。
「……えぇと……」
ついには視線を泳がせ、縮こまる。
「どう、して?」
自分には愛される資格なんてないと思っている顔。
自分が愛されるなんて思っていない顔。
自分が幸せになんて、なってはいけないと思っている顔。
思わず足を踏み出して、同じ目で見つめ返す。
「どうして、って」
「お前はそう思われなきゃいけない奴なんだ」
自分たちは知っているぞと。
お前がどれだけ愛されているかを。
「だから」
そんな資格はないと逃げ出そうとするのは、お見通しだ。
だから、その細い腕を掴んで離さないで。
「どうか」
どうか、逃げないで。
「……幸せになりましょう?」
もう十分苦しんだんだ、もういいだろう?
というわけでジェットストリームアタック!