さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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単純に勘だったんだろうけどね。



あるきっかけ

父が倒れてしばらく。

命に別状はなかったものの、"仕事"をするのはもう控えた方がいいという話になり。

しかしそれでも母の方は元気であったため、"仕事"の打診が来た。

だが母は父にゾッコンである。

普通に父以外には見向きしない程度には惚れに惚れ抜いており、最初は断るつもりでいたようだが…。

 

「頼まれた仕事は、ちゃんと受けろ」

 

そう最愛の人-父に言われてはしょうがない。

続々と送られてくる書類に苦虫を嚙み潰す顔をしては…。

 

「なァ、どいつがいい」

「…それ、僕に聞いていいの?」

 

機密事項でしょう?と言外に問うも「お前はバラしたりしねぇだろ」と長年親子関係を培ってきたが故の信頼を持ち出されては口をつぐむ。

そして請われたためにササッと書類に目を通し、

 

「この人」

「……ん。若ェな。しかもこっちに来たばっかか」

 

何となくで選んだ人だが、特段文句はなかったらしい。

「お前がそう言うならそうするかな」といかにも軽い調子で書類にサインを記し。

そうして末っ子-サンデースクラッパが生まれたのはまた別の話。

 

 

親友の母親と契った経緯を俺は知らない。

いや、知らなかった……というのが今は正しいか。

なにせ親友の母は自らの夫にベタ惚れで有名だと"仕事"の後に知ったぐらいだ。

流石に軽率だったかと後悔、不安にもなったが……どうもそういう訳でもなさそうな雰囲気。

むしろ親友は、そのことを含めても俺に変わらない態度で接してくる。

……まぁ、その事の始めの経緯は今は置いておこう。

ともかく、そんな親友が俺に対して何か思う所があるらしいのも知っていた。

だがそれは俺が親友に思うことと大差なく、つまり互いに同じ気持ちであることも察していたから……俺は特に何もしなかったのだ。

 

「まぁ、こういう"仕事"をしてるならたまにあることでしょ。しかも人気なら尚更さ」

 

あっけらかんと言い放つ様に、かつては"仕事"のたびに隠れて吐いていたくせにと思わず笑いが出る。

すると、まったく……と呆れたように親友は息を吐き出して。

……思えば俺はこの表情もコイツの"仕事"に対しての感情も、すべて知ったのは今更ながら最近の話なのだ。

だからかどこか腹の内で願う様に願掛けのようにもその心情を問うてみる。

 

───なぁ、お前は俺をどう思ってる?

 

普通でいう親友よりかは深いだろう関係。

そんじょそこらじゃ身内に入れないお前の、家族には及ばないけれど深いところに入り込んだ事実。

 

「…とはいえ、お前はそんな深く考えちゃいないんだろうが」

 

単純な本能。

ただそれだけ。





なまじっかそれが当たるからなあ…。
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