さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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案外お互いに重い関係性。



俺の

後輩に"仕事"相手ができたという。

 

「は?」

 

あれだけ渋って嫌がっていたというのに。

どういう風の吹き回しだとそれとなく問い詰めればコイツの弱いところを上手く攻めたやり口に内心舌打ちする。

 

…コイツの心の内にいるのは俺だけでいいのに。

トレーナーと、家族はまだ許すがぽっと出が。

意味が分からない。

理解ができない。

そんな話、今まで聞いたこともない。

今までのコイツなら逐一教えてくれるはずだと一瞬考えたが、今は関係ない。

体も心も、全部俺のモノなくせに、今更俺以外のものを欲しがるなんて。

 

……ああ、そうだ。

そうだったな。

お前、優しいもんな。

真剣さを向けられたら、それを無下に出来ないもんな。

けど。

俺はコイツの先輩だ。

そもそもが他の奴に目移りする隙なんて与えてやらなければいいだけの話だった。

そう、それだけの話だ。

何も難しい話じゃないじゃないか。

俺はただコイツを愛でていたい。

俺だけに心を開き、傷をさらけ出し、俺だけに弱さを見せる。

そして、俺が愛でるためだけに素直にその身を捧げる。

そんなコイツを俺が愛して何が悪い?

そう、悪いことなんて一つもないんだ。

 

……なら、そうだ。

お前の"仕事"相手なら、いずれ俺も関わることになるんだ。

なら、どうにかして会いに…。

……ん? ああ、そうだな。

お前の言う通りだ。

"挨拶"は大事だよな。

やっぱりお前は良い子で気が利く奴だよ。

わかった、わかった。

今度の休みにでも一緒に行こう。

───あぁ、楽しみだな。

 

 

俺は先輩のことが好きだ。

大好きだ。

唯一俺の本当を見ても失望せず、受け入れて、認めてくれて、側にいてくれた"先輩"だ。

好きだ。

好きに決まっている。

そんな先輩に俺がいつしか好意を抱くことは何の疑問も不自然もなく。

ただごく自然と当たり前のようにその想いは芽生えた。

至極当然だっただろう?

"尊敬の念"がいつしか尊敬じゃなくなることなんてさ。

先輩はカッコ良くて優しくて頼りになって、俺はいつも守られてばかりで甘えっぱなしで。

そんな先輩だから、俺みたいなのが相手では不釣り合いだってことぐらいわかっているんだ。

世間の目が徐々に変わっていくのを知っている。

先輩の思いや期待を裏切ってしまうことが何より心苦しい。

俺みたいなのが誰かを好きになっちゃいけない。

好きになっていいはずがなかった。

それをわかっていたはずなのに、それでも先輩への想いをあきらめるなんて到底出来やしなかった。

だから俺は目を背けた。

心の内で育ってしまったそれに無理矢理蓋をした。

そんな気持ちは重荷だと捨て去るために、打ち消して消し去るにはもってこいだったから。

種牡バという職業は別に悪いものじゃない。

多くの人から必要とされるし、それは俺みたいなやつにも例外はない。

役に立っていると思えることで自分を保とうとした。

それで先輩が……いつか先輩が、俺以外の誰かに恋をして幸せになるのならそれが一番だと言い訳をして見ないようにした。

捨てないといけなくて、でも捨てられなくて。

"仕事"の最中だけは目を逸らしてやり過ごすことが出来たから、ただそれに逃げた。

縋るように縋りつくようにして思いを押し殺して。

 

(でも、離れられないんだよなぁ…)





お互いにお互いがそばにいるのが当たり前に思ってるけどそれはそれとして、という話。
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