さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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どうせ答えは。



自問自答でも

「愛するってなんだろうね」

 

隣にいる恋人にそう問いかければ、慣れた手つきで抱き締められる。

この、僕の哲学的な問いはよくあることであり、僕が勝手に自問自答しているだけだから特に答えはいらないというのを目の前の恋人は知っているのだ。

自分よりも大きい体に抱き締められ、安堵を覚える。

こういうとこ才能だよな、なんて思えば分かりきったかのように触れるだけのキスをされて。

 

「…よく分かるね」

───ずっと見てるから。

 

僕が望まぬ限りはあまり触れてこない恋人。

だがこうしてスキンシップが多いのを考えると、思った以上に僕は欲張りなんだろう。

見て欲しい、触れて欲しい、…愛して、欲しい。

骨張った手に触れれば、指を絡まされ強く握られる。

手の冷たい恋人は温かい僕が好きで、でも僕はひんやりしたその指が苦手で。

でもその度に自分の体温を分け与えるように握ってくるから何も言えなくなるのだ。

 

(……狡いよなぁ)

 

そんな単純な僕の思考もお見通しである優しい恋人の名前を呼ぶと優しく触れ合わせてくれるので何度も短いキスを降らす。

好きだよ、だとかそんな言葉をこぼす暇さえ与えてくれない程に重ねられるのだが───僕にとってはそれはいつも通りのことなので。

 

「僕のこと好きだね」

 

 

周りすべてを出し抜いて、あの子に告白した。

するとあの子は鳩が豆鉄砲食らったような顔をしてすぐに「…恋愛感情とか分からないんだけど」と申し訳なさそうに返してきた。

そんなのは元々分かりきっていたので、友だちの延長線から始めようと提案すれば、あの子は頷いてくれたのだ。

それからの日々は楽しかった。毎日一緒に帰って、たまに休日にデートをして、……そんな普通の学生らしい生活が楽しくて仕方がなかった。

そんな時だ。

あの子が告白をされているところを見たのは。

相手は知らない奴で、でもその目は確実にあの子のことが好きだと語っていて───あぁ、自分みたいに周りを出し抜いてまで本気でこの子を好きになる人が現れたのか、とどこか他人事のように感じたのを覚えている。

そしてそれを断ろうとするあの子を見て思わず声をかけてしまった僕は本当に馬鹿だった。

 

「え、あ」

 

あの子に告白していた奴はすぐ逃げた。

残されたのは哀れなくらいに酷く青ざめたあの子だけ。

「ちがう、ちがう」と舌っ足らずの子どものように繰り返し呟くあの子は下手したら消えてしまいそうで、そんなあの子をどうにか引き留めたくて必死に言葉を紡いだ。

そうしてそれから数年が経って───自分とあの子はちゃんと恋人という関係に落ち着いたのだ。

 





元から憎からず思ってたからね。
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