さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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時たまある事象。



運命を愛するだけ

彼と出会ったのは唐突なことだった。

突如として目の前に現れた彼は自身を僕の運命だとのたまい、軽々と僕をさらった。

とはいえ、さらわれたとしても僕個人を心配する家ではなかったため、のたまうことは可笑しいけれど僕自身を見てくれる彼にまんまとさらわれたわけである。

…あの家は、僕を『類まれな才能』としか見ていなかった。

誰も彼もがそうだ。

だけど、だけど、…僕をさらってくれた彼だけは。

 

「いい子いい子」

 

やさしく頭を撫でて、甘えたいだけ甘えさせてくれる。

僕を、『類まれな才能』としてではなく、ただの子どもとして見てくれた。

それがどれだけ嬉しいことか!

だから僕は彼が好きだ。

彼のためならばなんでもできるとさえ思うほどには。

……でもその反面で、彼はいつかどこかへ行ってしまうのだろうなとも思っている。

あの家のように僕を見てくれないのが嫌で彼についていったけれど、それでも……いやだからこそ、この幸せな時間にも終わりがあることを覚悟しておかなければ。

……そう考えてからもう数年が経ったけれど、

 

「おはよう、グローリー」

 

寝起きの悪い僕を彼が起こしに来てくれる。

ここは彼の実家が保有するセーフハウスのひとつで、そこそこ色々な利便性がいい立地にある家だ。

 

「ほら、起きて起きて。ご飯もうできてるよ」

 

やわく頬をつつかれるのに眠ったフリをする。

そうすると困った彼が遠慮しながらも様々な手段を使って僕を起こそうと構ってくれるから。

……それに、彼の作るご飯は美味しいし。

だから僕はいつも寝たフリをしてしまうんだけれど、彼はそれさえ見越したかのように僕を優しく揺する。

その心地よさについ目を開けて彼を見つめてしまうのもいつものこと。

……ああもう! やっぱり好きだなぁ! そんな僕の内心など知らない彼が、僕を見つめてやさしく微笑むから。

もう少しだけとまた目を閉じてしまうのだった……。

 

 

今回の世界は、白の一族が大事にする存在のことごとくが悲惨な生活を送る世界で。

そんな世界、認められない彼らは各々がその相手を助け出しては一心に愛することを続けていた。

 

「大丈夫大丈夫」

「キミがどんな人でも大好きだよ」

 

たとえ、あなたが世界を滅ぼそうとしても。

この身を呈して守ってあげる。

気狂いと言われようが知ったことか。

自分たちにとって一番重要なのは愛するあなたの言葉だから。

あなたの言葉以外、意味なんてないの。

ねえ、あなたは幸せ?

後悔してない?

本当はこのままじゃいけないとか、思ってる?

もう苦しまなくていいよ。

もう戦わなくて良いんだよ。

もうあなたが傷つく必要なんてないんだよ。

ああほらまた泣いちゃって……。

そんなにも私たちが心配なの?

……そうだよね、それがあなたの愛し方だったものね。

でももういいんだよ。

大丈夫大丈夫、私たちが全部なんとかするからね。

……だからお願いだよ、そんな顔をしないでよ……。

 





ズブズブに依存してそう。
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