さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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誰にも見せないところ。



あの子の特別

シルバーバレットはあまり笑わない。

というかそもそも表情自体がかたい。

実の子どもの前でも微笑むぐらいが大概だし、"仕事"では言わずもがな。

だが、

 

「サンデー」

「ん」

 

彼の"仕事"部屋に訪れ、近づけば伸ばされる手。

それを慣れた手つきで首に回させて、

 

「よっと」

 

隈のひどい顔を顰めながらいいところを探す姿にぽんぽんと頭を撫でる。

そうしていいところを見つけたのか、俺の胸元に顔を擦り寄せて眠り始めたシルバーバレットをそのまま抱き上げた。

 

(やっぱ軽ィ…。この様子だとまた体重減ったか?)

 

隈の様子を見るに食事も積極的に摂ってなかったのか。

元から軽い体重がさらに軽くなったことで運ぶのになんの苦労もなかった。

ベッドの上に寝かせれば、深く眠っているのだろう目を覚ますこともなくこんこんと眠り続けるシルバーバレットの姿にほっと安堵の息をはいた。

 

(まあそりゃそうだよなァ)

 

寝顔を見ながら一人ぼやく。

ここ最近この男は碌に眠れてなかったはずだからなおさらだ。

"仕事"のためにあちこち飛び回るのを繰り返しながらその実寝る間を惜しんで情報収集に明け暮れる日々だったことは知っている。

そんな生活が続けば睡眠不足にもなるだろうよ、と他人事のように思っていたが。

 

(ま、俺も似たようなもんかね)

 

ふわ、と欠伸をして、結局は俺もシルバーバレットが眠るベッドに一緒に入って。

 

 

「サンデー」

 

アイツが満面の笑みを向けるのは俺だけだ。

他の誰にも向けられない笑顔。

基本、よくて微笑むだけの奴が俺にだけは。

嬉しかった。

"仕事"が終われば心から休める場所があって、ふたりで料理食って、油断して緩んだ顔で眠るアイツの顔が見れるから。

それがこの上なく幸せだと思ったし、これからも続いてほしいとも思っていたのに。

 

「サンデー…」

 

離れたくねェなァ……と微睡みのなかぼんやりと思う。

ああでもこれじゃあもう起き上がれそうにねェなと思い苦笑する。

もういっそ夢ならいいのにと思うが。

 

「かわいいな」

 

ぼんやりとしていく意識の中でアイツが泣く。

コイツ以外の人間を排除した部屋には死にかけの俺がいるのみ。

 

「置いていかないで」

 

ぽたぽたと雫が落ちてくる。

ひどく悲しげな顔をしているのだろうと意識の遠くで思う。

ごめんな、俺もお前を一人にするの、嫌だけどよ……。

最後の力で手を伸ばして触れればへにゃりと泣きそうな顔をしたアイツの顔が見えたような気がした。

ああ───まあいいか……なんて思いながら俺はそのまま眠るように意識を失った。

 





俺だけが知るお前。
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