さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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おかしくなって。



どうしようもなく

「ただ、燃え尽きただけの話です。愚かな羽虫がどこかのよだかのように星に惹かれて焼け落ちただけのこと」

 

端的にそう告げると、先輩はひどく悲しげというか、絶望的な顔をした。

先輩がそんな顔する必要ないのにと思うが、それを言えば平手打ちされるのが分かっていたから黙る。

元から、先輩は俺の脚の云々を知っていて。

ことあるごと心配してくれたが。

 

「これは俺の自業自得ですし」

 

撫でた脚には固定と包帯があり。

二度と競走バには戻れないと診断も受けた。

 

「先輩、泣かないで」

 

先輩の涙を拭いたいけれど、手は届かなかった。

こうも泣きじゃくられると俺も泣きそうになるから。

笑っていて欲しいなと思うのに。

 

 

結局、俺は先輩と同居することとなった。

最初は実家に戻ろうとしていたのだがいつの間にやら先輩が俺の両親と交渉していたようでいとも簡単に同居と相成った。

 

「先輩」

「ん」

 

ちゃんとバリアフリーが整っている一軒家。

一軒家を買って、リフォームもして…先輩ってば俺のためにお金を使って。

……こごでされてしまっては仕方ないなと諦めたのも確かで。

このままじゃダメだと分かっているけど…、目の前の先輩にその身を寄せた。

 

「先輩」

「なんだ」

「ごめんなさい」

「…俺がしたいことだからいいんだよ」

 

トイレこそ自分で行かせてもらえるが、風呂は先輩の手がなきゃ危ないというのは序の口で。

料理も何とかさせてもらえるけれど。

 

「何も考えるな」

「……」

 

先輩はやさしい。

先輩がいなきゃ生きていけないような気もする。

だけどそれはダメだとも思っていて。

いつまでも先輩におんぶに抱っこではいけないとも思っているのに……。

……諦めろと言うように先輩は俺を抱きしめる腕に力を籠めた。

 

 

あのまま離していればそのままどこかに消えてしまいそうだったから。

手を伸ばして、掴んだ。

俺の手だけは振り払わないアイツは困ったように俺を見て、結局やれやれとでも言うように身を寄せた。

 

(どこにも行くな)

 

強く、小さな手を握る。

本当に、どこもかしこも小さい体だ。

腕も脚も細ェのなんの。

俺が掴まなければどこかへ消えてしまいそうな奴。

ああ、ホント。

 

(俺も、お前に狂わされてるってことか)

 

誰もを惹き付けるお前に俺も惹き付けられただけ。

けど、近くにいたために俺は他のよりも多く焼かれて。

どっちの方がマシだったんだか、もう分からなくなってる。

 

「先輩、ごめんなさい」

 

その『ごめんなさい』は好きということだと知っている。

とてもとても悲しそうな声音に愛を感じる俺はもう可笑しいんだろうか。

いや元々可笑しいか。

 

(お前に会った、あの時から)





お互いにお互いを必要としているだけ。
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