さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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またの名を共依存。



ストックホルム?

「ステイゴールド、さん」

「ん」

 

シルバーチャンプに攫われてどれぐらい経ったか。

思い詰めたコイツは大好きな俺を攫って、それでも後悔を捨てきれなくて。

…………そろそろ、かね。

俺はもう腹を括ってるんだし。

コイツは俺の感情なぞ考慮していない。

勝手に自分の感情を優先して、俺の感情を無視したと思っている。

 

「え、わっ!?」

 

軽い体を引っ張る。

呆気なく俺の方に倒れてきた後輩を抱き締めれば焦ったように逃げ出そうとして。

 

「逃げるな」

 

俺のことを素直に聞くシルバーチャンプは渋々体の力を抜く。

俺に身を委ねるも…何を言われるのかと次は怯えだして。

 

「チャンプ」

 

ピクリと反応がある。

それに努めて…やさしい声を出して触れれば、今までの生活で何度も繰り返したコトを思い出したのか色白の肌に血色が乗っていく。

 

「お前、俺から逃げられると思うなよ」

 

すり、するりと。

攫ったのはお前だが、お前をモノにしたのは俺だ。

だから、俺は俺の好きにしているだけ。

 

「……愛してる」

 

腕の中の後輩が身動ぎして、俺の背中辺りをきゅっと握り返した。

 

 

ステイゴールド先輩のことを想うようになったのは必然だったのだろう。

はじめて自分を受け入れてくれた人。

トレーナーはもはや一心同体みたいなものだから、先輩がはじめての人。

愚図な自分の手を引いてくれて、呆れずに普通に接してくれる姿に堕ちない方がおかしい。

自分は変わってるから、みんなは自分を避けてしまうから。

でも先輩だけは違った。

だから、そんな先輩を愛した。

……したのに。

 

(まさかこんなことになるなんて……!)

 

シルバーチャンプはステイゴールドのことが好きだ。

もうどうしようもないぐらい好きで好きで大好きで愛している。

……まさか思った以上に深い関係になるとは思わなかったが。

はじめは拒絶されると思っていたのだが簡単に受け入れられて今に至る。

殴られても、罵倒されてもおかしくない行為のはずだったんだけどな。

 

「チャンプ」

「…はい」

 

慣れたものだ。

触れられ、愛され、信じられないようなことも何度かした。

愛でて、触れて、キスをされて……俺のモノだと言われ。

 

(ストックホルム…ってわけじゃないよな)

 

初めは脅しだった行為がいつの間にか愛情表現になり、シルバーチャンプは何とも言えない表情をする。

むしろこれでは自分が手籠めにされたみたいだとも思ってしまう。

今日も求められるがままに自分の体を委ねる。

この関係は歪んでいる。

おかしい、普通じゃない……そんなことは百も承知だ。

けれど、もうずっとこのままで居たいと思ってしまうから余計に困ったもので。

 

(だめだよなぁ)

 

幸せになってしまうからどんどん貪欲になるのだ。





ズブズブと底なし沼。
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