さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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当人はそう思ってる。



満ち足りた家族

シルバーバレットは我が子を愛している。

自分にはもったいないほどの優秀な我が子たちを。

文武両道、眉目秀麗。

ひとりだけでも誇れるような子がたくさん。

 

「いい子いい子」

 

我が子のひとりの頭を撫でる。

ここにはその我が子しかいない。

他の我が子がいたら「自分も撫でて!」と騒がしくなること請け合いだ。

だから、今だけは。

シルバーバレットは我が子を愛でる。

 

 

シルバーバレットの朝は早い。

それは子どもたちの朝食を作るためであったり洗濯機を回すためであったり。

最近は学園を卒業して、そのまま家に残っている子たちが手伝うようになってくれて、とても楽になった。

掃除も洗濯も食器洗いも時間がかからずすぐに終わる。

だからシルバーバレットはそそくさと朝食の準備を始めるのだ。

今日の朝食はフレンチトーストとサラダにオニオンスープだ。

事前に準備していたパンを冷蔵庫から取りだし、フライパンにバターを溶かす。

そして浸したパンを入れるとジュワァといういい音がキッチンに響くと同時に香ばしい匂いが立ち込める。

その匂いにつられて起きてくるのが数名。

シルバーバレットは子どもたちが起きて来るのを背中で感じながら料理を仕上げていく。

パンをひっくり返して裏面も焼き、皿に載せてテーブルへと運ぶ。

そしてスープにはフライドオニオンとクルトンを入れて完成だ。

サラダも皿にぶちこんで。

これで朝食の完成だ。

シルバーバレットはまだ起きてない子どもたちを起こしに向かうのだった……。

 

 

シルバーバレットの子どもたちはシルバーバレットに脳破壊されている。

元より悲惨だった生活をシルバーバレットに救われたのもそうだが、救われてからの日常の豪華さに脳がやられたのだ。

毎日の豪勢な食事にシワひとつない服に暖かなお風呂に…。

トレーニング場や遊び場だって完備だし、書籍やほかも有り余るほどある。

子どもだからと甘えていたわけではないが、あまりにも待遇が良すぎて感覚がマヒしているところもあるかもしれない。

子どもたちはそれが当然のようになっているのでシルバーバレットにもっと甘えてくるようにもなっているのだが……。

ともあれ、彼らに倫理観はないし善悪の判断もない。

いやなくされたの方が正しいか。

なんたって彼らからすれば自分たちの父親が至高と思っているのだ。

 

「みんないい子だね」

 

にこりとシルバーバレットが笑う。

自分が救いあげた子どもたちの本性を知らないまま。

ただのありふれた子どもと思い、親としての真っ当な愛を注ぎ…。





なお。
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