さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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誰も彼もが。



見ているのに

エルコンドルパサーには執着している相手がいる。

その名はシルバーチャンプ。

魂にまで焼き付いている彼女は…エルコンドルパサーのことを、覚えていない。

 

「先輩!」

 

今日も今日とて、彼女は先輩ことステイゴールドを慕う。

まるで刷り込みされた雛のようにちょこちょこと後ろを着いていき、可愛がられ。

時に先輩後輩同士では収まらない、激しいスキンシップをされながらも、満更でもない様子で受け入れる。

 

「いい人だぜ?先輩は」

 

クラスメイト全員、エルコンドルパサーと同じ穴の狢であるがゆえ、それとなく苦言を呈すのだが当人はどこ吹く風。

先輩がそんなことするはずないと一心に信頼を向けていた。

……これはまた、ひと波乱ありそうな雰囲気にクラスの空気は剣呑なものとなっているのだが、それを察したエルコンドルパサーも苦虫を噛み潰した顔をする。

 

(なんで…)

 

あの時、お前が助けを求めたのは自分だろうと。

いやまぁお前は勝手に救われたわけだがそれでもと。

他の奴らよりは何歩もリードしているはずなのに、ステイゴールドが邪魔をする。

あれはもう相思相愛といってもいいほどで。

……なんだ?

もう無理矢理こっちを見させるしかないのか?と悶々と考えていたある日。

 

「なァ、パサー」

「な、なんデスかっ!?」

「今日一緒に併走してくんないか?」

「よっ、よろこんデッ!?」

 

不意に、唐突に誰もが望むことを要求されて、変な声を出してしまう。

それまではしゃいでいたクラスメイトから嫉妬の視線を向けられる。

しかし、これはまたとないチャンスだ。

この機を逃せばもう一生巡ってこないような気さえするし……何よりエルコンドルパサーは、シルバーチャンプに並々ならぬ感情を抱いているのだから!

 

(少しでも……こちらを見させるッ……!)

 

そんな邪な思いを抱きながら、放課後のトレーニングコースで併走をする二人だったが……結果は散々だった。

いや勝ったのはエルコンドルパサーなのだが、ある一定の瞬間まではシルバーチャンプが勝っていて。

「脚、あんまりよくないから本気で走れねぇんだよ」と、明らかに周囲には秘密の発言をする彼女。

どうやら彼女の走りは脚の怪我に縛られていたらしい。

そんなの…。

 

(たぶん、ステイゴールドは知ってるんでしょうね)

 

嗚呼、憎い、憎い。

彼女のすべてを、何の労力もなく奪っていく。

こちらがどれほどソレを求めているのか知らないように。

その日から、エルコンドルパサーはシルバーチャンプの脚に気を遣うようになった。

……いや、それだけじゃない。

他の奴らが見落としている部分も、全て拾い上げた。

それはまるで……そう、親鳥のように。

 

(ワタシがアナタを一番理解しています)

(だからどうか振り向いてください)

(アナタのことをもっと教えてください)

 

そんな想いを込めて接し続けていれば……いつかはきっとと夢見て。

しかしそんな淡い希望はすぐに打ち砕かれるのだけど。





報われない。
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