無自覚に傲慢。
灰方誠が騎乗した馬で有名といえばあの二頭しかいないわけだが。
「最強はホワイトキティ。バレットは…ありゃ晩成だからな」
相棒と呼ぶならあの一頭だが、最強といえばというと。
そして自分が管理したその二頭を祖父祖母に持つ馬を引き合いに出す。
「怪我と故障があったのも痛かった。アレがなけりゃあホワイトキティ越えも有り得たかもしれん」
傍目から見ればどちらもオーパーツじみた規格外ではあるが。
乗っていた・見ていた当人からすればそれなりの差はあるらしい。
「まぁアレらの素養を一番引き継いだって言われりゃあアイツではあるが」
*
(……むす)
その日、シルバーバレットは拗ねていた。
無意識ではあれども傲慢に、自分がいちばん強いと思っている彼は自分が一番じゃないと言われたことに頬を膨らませる。
なかなか見ないそんな姿にサンデーサイレンスは嬉々として甘やかし始める。
ぷく…と膨らんだ頬の可愛いこと!
思わず指で押して空気を抜きたいくらいにはすごく可愛い。
「機嫌直せよ」
「拗ねてないし…」
「どこがぁ」
顰め顔が直る予兆はない。
「一緒に走るか?」といつもなら喜んで乗ってくるだろうことを告げても「今日はそんな気分じゃない」とか。
近くにあった菓子を餌付けしつつ、サンデーサイレンスは首を傾げていた。
それなりに長い付き合いではあるが、こうも拗ねられたのは初めてかもしれないなと。
*
(あーもー……)
シルバーバレットは頭を抱える。
だって今までずっと最強の座を独占していたのは自分だったはずなのにそれを揺らがされたのだから!
いやまあちょっと慢心があると言われればそうかもだけれどそれでもそれを差し引いても自分こそが最強だし一番でいなきゃいけないのに!!
そんなことを考えているというのにフニフニ推し続けられる頬っぺたをぷくっと膨らませる。
「サンデー、僕真面目に悩んでるんだよ?」
普段ならそれをすれば我ながら直ぐに機嫌が直るのに今日は違う。
余計に膨れ始めた頬をつつかれる感触も結構好きではあるけれど、それでも今は不満をどうにかするのが優先だ。
それはそれとして膨らんだ頬をつつくのは楽しかったのか思わず漏れる笑みにも気付かない程度であるが。
……やがて満足したサンデーサイレンスはパンと手を打って話題を変えることにしたらしい。
依然としてむくれ続けるシルバーバレットをそのままに彼は話し始めるのだ。
「またどっか行こうぜ。よさげなイベントあるならそこでいいし」
「……む〜」
「そんなに悩んでちゃ熱出すっての。な?」
白猫競走馬世界線にて。
灰方さんにとっての相棒はバックおじいちゃんだけど最強は白猫さんな話。