銀弾が性格的に希薄な世界線。
シルバーバレットが子どもを作ったのは自分を超える存在を求めたからである。
世界に飛び出しても彼に敵うものはなく、果てには芝でもダートでも世界一になってしまった。
くだらなく、またつまらない世界。
何をしても拭えない本能的な孤独に耐えきれず、世間に望まれていたこともあって彼は子どもを作った。
愛とやらは分からなかったが、求められるだけの関係は問題なかった。
コミュニケーションが苦手な身としてはこのくらいの方が気が楽だ。
しかし子どもは別である。
自分ひとりでは生きていけないちっぽけな存在。
それがまるで親についてくる雛鳥のようにシルバーバレットを慕うものだから、どうにもむず痒くて堪らなかった。
「まあ、よくも悪くも及第点というべきか」
つまらなく、そして退屈な世界。
だが、子どもは愛らしく、その成長を見守るのはなかなかに面白いとシルバーバレットは思っている。
この年になって新しい発見ができるとは、人生とは分からないものだ。
そんなとりとめのないことを思い浮かべながら、彼はふと自分の我が子について考える。
「そういえば、そろそろだったか?」
シルバーバレットの子どもは気づけばクラシックを走るまでの年齢になった。
このために育てたといっても過言ではないため、珍しくひっそりとレース場まで赴いて観戦することにした。
一人でのレース観戦は退屈だろうが、我が子が勝つ瞬間を見届けるのも一興だろう。
しかし、そう考えたときだった。
シルバーバレットは不意に足を止める。
その理由は、彼の前に一人の男が立っていたからだ。
髪色は黒で白い流星が走り、目つきの悪い瞳は光の加減によっては金色にも見える黄色。
「やっぱり来たか」
「……チッ、」
何が面白いのか分からないが、よく絡んでくる面倒なやつとかち合った。
相変わらずの男は馴れ馴れしくシルバーバレットの肩に腕を回しては、気安く話しかけてくる。
その話題はいつものようにくだらなかったが、どうしてか今回に限ってはシルバーバレットも話題に乗っかった。
「あの子が勝つ」
「……へぇ?珍しいこともあるもんだ」
明言するなんて、珍しいと。
まぁ基本は興味なく、淡々と見ているから。
男は意外そうにしていたが、シルバーバレットはそれを無視して話を続ける。
それは確信した口振りで。
そして、その予感が的中する。
シルバーバレットの子どもは一着を取ったのだ。
それも、大差をつけての圧勝である。
レースに勝ったというのに、子どもは喜びもせず、ただ静かに佇んでいた。
「……おい、お前のガキだったのかよ」
「似てないでしょ?」
「…いや、似てらァ」
「…そう」
あのSSにも割と塩対応してるんだ…。