さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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バニラ味のウエハースは苦行。



ウエハース…

「うぷ…」

 

さすがに買いすぎたかもしれない…。

目の前にあるウエハースはまだまだ減りそうにない。

 

「我が子が出るからって買いすぎた…」

 

元からあんまり食べるほうじゃないのに、 この量はちょっと……。

でも、我が子の晴れ舞台だ! 食べないと!! と自分を奮い立たせてウエハースを頬張る。

そんな時。

 

「おとーさん!なに食べてるの?」

「やぁ、可愛い子」

 

幼い我が子がやってきた。

僕の机の上に積まれているウエハースの山を見て不思議そうにしている。

……可愛いなぁ。

我が子は天使だ、うん。

僕はウエハースの山から一つ手に取るとそれを我が子の口へ持っていった。

すると、その小さな口でパクッと食べた。

……か、可愛い!! 僕の子可愛すぎるよ!!

 

「美味しい?」

「うん!」

「みんな食べるかな…?まだいっぱいあるし持っていっていいよ」

「ホント!?やったー!」

 

我が子はワサッと机の上にあったウエハースを持つとリビングの方へ走り去っていく。

……元気だなぁ。

子どもだからなのかなぁ?

 

*

 

敬愛する父親からもらったソレを子どもは大事に抱えた。

気軽に何かを与えてくれることがあまりない父がくれたもの。

自分にとっては奇跡のようなことだ。

……でも、このウエハース、みんなに分けた方がいいかな……?

ふとそんな思考がよぎる。

でも……。

大好きな父からもらったものを分けたくない!

子どもはリビングへ駆けると、そのまま自室へ走り戻った。

幸運にもリビングには他のきょうだいはおらず、 ウエハースは子ども一人のものになったのだった。

……やった!

父さんからの贈り物は自分だけのもの!!

 

「どうした?」

「えあっ!?……!!!」

「どうしたんだよそんな量の…。……もしかして」

「ち、ちが…!」

「へぇ…ふぅん?」

「あ、あぅ…」

 

…と思ったら同室であるきょうだいはいたらしく。

目ざとく腕いっぱいに持つウエハースに目をつけては全部分かりきったように見つめてきて。

 

「お前だけじゃ食えんだろ、その量」

「食べれるもん!」

「俺らん中で一番親父に食う量似た奴がなに言ってる」

 

と、三分の一ほど持っていかれた。

そのきょうだいは「勿体ぶらずに食わんとすぐ賞味期限来んぞ」とだけ言って部屋から出て行った。

子どもは、自分のもの(少し減った)であるウエハースを大事に抱えたまま、自分も布団に潜る。

……父さんからの贈り物が減っちゃった。

でも、これ以降は自分がもらったものだから!

誰にもあげないもん!

 

「やああああ!!!!」

「へいへい、泣くな泣くな」





意外と収集癖がある銀弾。
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