さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ピリッと。



いひゃい

唇を開いた拍子に、ピリと裂けた感覚がしたのに『アラ』と内心舌打ちをする。

まぁ本来はちゃんとリップクリームでも塗っておけばよかったんだろうが、面倒で唇が乾くたびに舌で湿らせていたのだから仕方がない。

 

「わあ!」

 

すると、その傷に気がついたのか、慌ててそれ用のリップクリームを僕の唇に塗ってくるミスター。

 

「シルバー、リップクリームくらい塗らないと」

「……なんかベタベタするから嫌いなんだよ」

「えー? そんなの塗ってるうちに入らないと思うけどー?」

「…」

 

ベタベタする、と思いながらも善意を無駄にはできないので、大人しく塗られておく。

 

「あ、そうだ」

 

薄く甘い匂いの香る唇を開閉していると不意にかけられた言葉に首を傾げる。

「どうした?」と声をかければ、「ちょうどいいし一緒に買い物行こうよ!」なんて。

 

「だってそうしないと『買っておくから』って、シルバー躱すでしょ?」

「信用がないな」

「こういうとこはね〜」

 

 

ぺろりと唇を舐める姿が、ひどく扇情的だった。

 

「シルバー、」

 

湿った唇に指を這わす。

すれば、小さく肩が跳ねるのに思わず笑みがこぼれた。

 

「な、なんだよ……」

「ううん? なんでもないよ」

 

そう言って笑ってやれば、むっとした表情をするシルバー。

けれどすぐに諦めたのか、僕の手からするりと抜け出すとそのまま荷物をまとめてしまった。

 

「帰るぞ」

「えー?」

 

もう帰っちゃうのー?なんて言いながらも別に引き止める気はなかった。

引き止められる理由が、無かったからだ。

『しくったな』と内心で舌を打つ。

 

「ねぇシルバー」

「……なんだよ」

「アタシさ、キミのこと好きだよ」

「っ!」

 

そう告げれば驚いたようにこちらを振り向くあの子。

その反応に思わず笑いそうになったが、グッと堪える。

『冗談』だと思われてしまったら意味がないからだ。

 

(まぁ……冗談じゃないんだけど)

「…もう」

「んふふ」

「…ご飯作って欲しいなら、そう言え」

「へっ?」

「どうせテキトーなモン食べてるんでしょう?ほらスーパー行くよ」

 

ぽかんとする自分を放って、さっさと用意を済ませたキミが急かす。

 

「あ、ちょ、ちょっと待ってよシルバー!」

 

慌てて追いかけると、呆れたように溜息を吐かれた。

 

「もう……好きってそういう意味で言ったんじゃないんだけどなぁ」

 

でも、好機を逃す気もなくて。

「何か食べたいものあるの」と慣れた口調で聞かれるのに「なんでもいいよ」と答えながら、キミの隣に並んだ。

 

「…何でもって、それが一番困るんだがなぁ」





僕:
シルバーバレット。
冬場になるとよく唇がピリってなる。
いひゃい。
でもあんましリップクリームは塗らない。
ちゃんとリップクリームを買うこともあるけど、一、二回使ってあとはもう終わりであるとか。
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