さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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救い、掬い。



救世主ではあるけれど、

昔から。

 

「いい子いい子」

 

そう言って今も昔もお父様に頭を撫でられるたび、不思議な心地がした。

ふわふわと、それでいて落ち着かない。

嬉しいことは嬉しいのだけど、どうにもそれから逃れたい気持ちの二律背反。

自らの子であるはずの自分を非難することしかしなかった生物学上の母とは違う、優しく、柔らかく、温かな手。

叩くことしかしなかった、生物学上の母とは…。

 

「お父様」

「ん?」

「なんで……どうして、僕を……」

 

どうして僕をこんなにまで愛してくれるのですか?

そんな問いは喉の奥につっかえて出てこなかったけれど。

代わりに僕はこう言った。

 

「……ありがとうございます」

 

それを聞いたお父様は一瞬だけきょとんとした顔をしてから、また僕の頭を撫でた。

撫でながら、ふと思いついたように口を開く。

 

「そうだ!今日は何か頼むかい?せっかくの二人きりだし、いつも僕のご飯ってのも味気ないだろう?」

 

お父様が見当違いなことを言う。

僕はずっと、あの日からずっと、…お父様の作るご飯が大好きなのに。

どれだけ体調が悪くても、お父様の作ったものを食べると一発なのに。

 

「お父様のご飯がいいです」

「……そうかい?じゃあ、腕によりをかけて作っちゃうぞー!」

 

本心を告げると、そう言って台所に向かう。

ルンルンとするお父様の背中を目で追いながら僕は思う。

……僕の好きな食べ物はね、お父様。

僕の、好きなものは──。

 

 

引き取った当初のその子-のちに"シロガネハイセイコ"と名付けた-は、ガリガリだったし、目に光がなかった。

まさに死んだ魚のような目をしていた。

きっと、…愛されていなかったんだろう。

僕は直感的にそう思った。

だから、僕はシロガネハイセイコ(この子)を、…シロガネハイセイコ(この子)を含めて我が子たちを、幸せにしようと心に決めたのだ。

 

「おとうさま」

 

そう言って僕に縋り付くその子は、明らかに栄養失調だったし、腕も足も棒のようだった。

けれど、その目には強い感情があった。

 

「これからは僕が一緒だよ。キミを愛する。痛いことなんて絶対しない。幸せにする…!」

 

その目を見て、救いあげたからには捨てることはもう、許されないのだと悟った。

無垢ではあれど歪んでしまったこの子を裏切る、なんて悪徳は。

枯れ枝のような体を折らぬように慎重に抱き締める。

冷えた体だった。

 

「世界中の誰もがキミを嫌ったって、僕だけは。世界中を敵に回したって、僕だけは、お父さん、だけは」

 

ずっとずっと、キミのことを。





僕:
シルバーバレット。
子煩悩。
子どものためなら世界だって敵に回してやる所存なぐらいには。
でも今までろくな環境にいなかった子どもたちに初手その言葉は劇薬が過ぎると思うんですが…。
しかも救いあげたところから救いあげたところだし。
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