さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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だって『運命』だもの。



あなたがいい

サラ系であるヒカルイマイに、"仕事"の依頼が入ることはそうない。

だがその日は違った。

 

「はぁ?」

 

わざわざ『ヒカルイマイがいい』と依頼してきた牝バがいるのだと話があり。

ただの冷やかしだろうと、ヒカルイマイは気乗りしない様子で依頼人の元へと向かった。

そしてそこで待っていたのは、

 

「ハジメマシテ、今日はよろしく」

「……え?」

「ン?ちゃんと依頼出してたよな……」

「いやその……」

 

"仕事"の依頼人である牝バは、───とても、綺麗だった。

思わず見蕩れてしまうほどに。

きっと街中を歩けば、誰もが振り返るだろう。

 

「アンタ…俺で、いいのか?」

「あ゛ぁ?」

 

美人が凄むと、怖い。

 

「いやその……俺でいいのかって」

「アンタがいい。だから依頼した」

「……は?」

 

彼女ほどの美人が望むなら誰だって…、なのに。

 

「アンタを見つけるのに、だいぶ骨を折ったんだぜ?」

「え、俺を探してた?」

「あぁ。アンタに依頼したかったから」

「……なんで?」

 

美人は、少し恥ずかしそうに視線を外して言った。

 

「一目惚れしたんだよ……言わせんな」

 

ヒカルイマイと彼女との出会いは、そんな一言から始まった。

彼女は歴史のある家の生まれで、その美貌も相俟って幼い頃から蝶よ花よと育てられてきたらしい。

が、彼女はそうして育ったとは思えないほどしっかりとしており、一人で生きていこうと思えばバリバリと働ける女性だった。

だが、彼女は働けなかった。

 

「私が働くには、一つ大きな問題があってな」

「問題?」

「あぁ……私の親父がな…過保護でよ」

「はぁ……」

 

それはそうだろうとヒカルイマイは思ったが、口出しはしないでおくことにした。

そんなヒカルイマイの考えを見抜いたのか、彼女は話を続ける。

 

「本当に過保護でね……一人で生きていくなんて言ったらどうなるか分からないんだ…」

「はぁ……」

 

それは確かに問題だ。

だが、それのどこが問題なのかとヒカルイマイは疑問に思った。

そんなヒカルイマイの様子に、彼女は苦笑いしながら言った。

 

「だが親父がな、アンタだったらいいって」

「……え?」

「そういう親父なんだよ」

「いや……でも、アンタならいくらでもいい男と結婚出来るんじゃ……」

 

美人で家柄も申し分ない彼女が、どうしてわざわざ?という疑問が拭えない。

いや、それ以前に。

 

「俺?なんで?」

「あ?アンタ自分の評価低いな」

「……は?」

 

美人が呆れたように言う。

 

「こんな美人が求めてんだから素直にハイって頷いとけや。…なァ?」

「…はい」





たとえ、あなたが覚えてなくとも。
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