さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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彼女から見た歪。



つまらなそう

彼はとてもつまらなそうに世界を見る馬であった。

 

 

出会いとしてはよくあるもので、ちょうどお互いに予定があったから併走相手になったというもので。

その頃にはデビュー戦を終えていたわたしとまだそういった目処も立っていなかったアイツ。

というか、その出会いの前からわたしはアイツのことを知っていた。

なにせアイツは暇さえあれば人助けをするウマで、その助けられた相手から熱狂的に慕われておりファンクラブというには過ぎた集団まで出来ていた。

その集団は…考えるのはよそう。

 

それはそれとして。

そんなアイツがわたしに声をかけてきたのには……まあ、うん。

ちょっと運命的だなーとか思ってしまったのは秘密である。

秘密である、が。

 

(なんで!勝てないのよ!!)

 

まだ体が出来上がっていないのは分かっている。

だがそれは相手も同じ───いや、相手の方がまだ未熟のはずなのに。

 

「…そろそろやめましょうやセンパイ。そんなに根詰めると怪我しますぜ」

 

何度も何度も何度も。

"あの日と同じ"、芝2000メートル。

ソイツから逃げ切ろうとした。

"前"の経験も含めての、普通ならば誰も寄せ付けないはずの。

けれど、

 

「にしても、すごいっすね。三冠とか獲ってもおかしくないんじゃないすか?」

 

けろりとアイツは言う。

全身で息をするわたしが見えていないかのように、飄々と、軽々と。

それが、わたしには……。

わたしは!

───あの"シンボリルドルフ(【皇帝】)"だって超えたのに!

そんなわたしの内心を知らずにアイツは言う。

それは、まるでなんでもないことのように。

……ああ、そうだろう。

きっとこのソイツにとってはなんでもないことなんだろう。

"あの日のわたし"を見てそうだったように!

 

(……っ)

 

ぎり、と奥歯をかみしめる。

その感情の正体は分からない。

ただ、わたしは……その感情をそのままにしておくことは出来なかった。

 

「……今度は勝つわよ」

「へーへー」

 

 

我ながら面倒そうな先輩に捕まったもんだ。

彼女の噂はなにかとよく聞こえてくる。

まぁ端的にいうと優等生ってヤツか。

座学をそつなくこなし、いざという時のレースでも優秀も優秀。

いずれは生徒会にも、だとか。

デビュー戦を終えたばかりではあるが既に彼女のファンは多く、またその全てに彼女自身が笑顔で応えているらしい……。

そんな先輩は何が気に入ったのか知らないが俺にやたらと絡んできた。

 

(はぁ、)

 

と俺は内心でぼやく。

あの先輩も大概だ。

わざとという訳ではないが、多少ゆるく走って負けたが最後死ぬほど付き合わされるんだ……。

 

「いたわね、───アウトレイジ」

「ゲッ!」





やっぱ銀系列は女性から押せ押せされてるのが似合う。
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