さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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その目は。



悪夢であれば

悪夢を見るのが好きだった。

いや、夢の内容は思い出したくもないものばかりであったが悪夢を見た暁には、大好きな父が己を、己だけを見てくれたから。

 

「おいで」

 

やさしい父が抱きしめてくれる。

心臓の音を聞かせてくれて、背中をトントンと、ゆっくりとしたリズムで叩いてくれる。

 

「███は僕が、守ってやるからね」

 

その言葉を聞くたびに嬉しくて仕方がなかった。

……でも物心がついてくれば父が多忙であることぐらい、子どもでも判る。

家にいる時間よりも、いない時間のほうが長くなって、自分以外にも続々と子どもが増えてきた───しかもその全てが腹違いのきょうだいとあればなおさら!

 

(おとうさん…)

 

父の視線が割かれていく。

見つめるものが多すぎて、父が自分を見てくれない。

それならそれでいい。

所詮自分と父は、血が繋がっているだけの他人なのだ。

引き取られたばかりで精神が不安定なきょうだいたちのためというのならそれも仕方ない。

だが父は言ったのだ。

 

『愛してるよ───僕の大事な大事な███』

 

(なら僕はおとうさんのためだけにうごくモノになればいいんだ)

自分は父にとって必要なものになりたいと自覚した時に抱いた感情だ。

このまま父に必要とされなければ、きっと自分は生きてはいけない。

いやそもそも、この身体は父のために生まれてきたと言っても過言ではないのだから。

だから父が望むのならばどんなことでもしよう。

父の役に立つためならば、どんな危険なことだってしてもいいとさえ思えたのだ。

 

───そんな時、自分は"アイツ"に出会った。

あの時の感情はあえて言葉にするまでもないだろう。

ああ───よりにもよって同じ穴のムジナに出会うとは。

自分が父の代表産クになるだろうと周りから称された時は天にも昇る気持ちだった!

これで父の役に立てると思ったからだ!

けれど、けれども…。

 

「あの子もすごいねぇ」

 

 

僕の子どもたちは────引き取った我が子、と言わねばならないが、は皆少なからず精神が不安定だ。

日中は俗にいう『いい子』にしているが夜になると途端に。

 

「大丈夫だよ、大丈夫」

 

泣きわめく我が子を抱きしめてあやす。

泣き止まない我が子を抱きしめてあやす。

 

「大丈夫だよ」

 

大丈夫、大丈夫とやさしく言い聞かせる。

ああ───これでいいのかという疑問が鎌首をもたげてくるが、それも振り払って 僕はこの子たちの父親なのだから。

 

「……」

 

心臓の音を聞かせると皆落ち着いていくからと、抱きしめながら僕はこの子と同じベッドで眠る。

どんなに疲れていようとも、この子たちが泣いているのならば僕はいつだって駆けつけて慰めるのだから。

 

「だから、泣かないでおくれ」

 

ああ───でも。

 

「おとうさんはね、███のことを愛してるよ」

 

その一言で、子どもたちは泣き止んでくれるから……。

 





ぼくだけをみて。
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