さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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苛まれても。



あなたがいるから

「雨が降りそう」

「そうか」

 

にぶく火傷跡が痛むのを隠してそう言えば親友が干している洗濯物を取りに行く。

相も変わらずこういう時に痛む傷である。

もう慣れ親しんだものだと言えば聞こえはいいが、今でも道行けば顔をしかめられるくらいには目立つものだ。

この傷は、あの日に負ったものだと言えば誰もが納得してくれる。

あの日の傷を、僕は忘れない。

あの日、僕は初めて人を█した日を忘れない。

人を█したという罪は消えない。

だが、その罪を「仕方のなかったこと」と許されるなんて!

だから僕はこの罪を誰にも語らないし、語るつもりもない。

ただ僕が背負っていればいいだけのことだとそう決めているから。

そしてそれを知っているのは比翼連理のトレーナーを除くとこの親友だけ。

 

「…大丈夫か?」

「ちょっと痛いだけだよ」

 

慈しむように傷を撫でられるのに「汚いよ」と呟く。

まぁそうは言ってもこの友人は引かない。

僕もこの友にならと諦めているところもある。

だからこういう時は甘えようと思える。

それでいいのだ、とそう思えるから。

 

 

サバイバーズギルトというやつだろうか。

俺の親友-シルバーバレットは罪を背負っている。

表向きは吹っ切っているように見えるから逆にタチが悪く、そしてこれを知っているのは俺だけだ。

ある日、突如としてシルバーバレットが負傷して帰って来た。

事故や事件に巻き込まれてできた傷ではなかった。

自傷に限りなく近いそれは、それ以降も何度も繰り返すため医者でも匙を投げたもので、それも当たり前だと頷けた。

…誰にだって話したくないことはあるし、触れて欲しくないところもある。

その相手がよく知る者なら尚更だ。

 

「バレット」

 

だから俺は何も言わない。

ただ寄り添うだけ。

辛いものは辛い。

苦しいものは苦しい。

そう感じるのは当たり前のことで、それを否定されるいわれはないのだ。

…俺はこの傷を肯定する。

その罪も傷も全てひっくるめてシルバーバレットというひとりのウマであると知っているから。

だから俺は何も言わないし言えない。

ただ寄り添うだけだ。

 

「……今日は甘えたさんだね」

「まぁな」

 

ぎゅうと抱きしめた体は嫌に細い。

元から華奢なやつだが最近はハッキリ薄くなっている気がする。

たぶん、夢見が悪いのだろう。

知らないフリを通しているが吐いている音をよく聞く。

このままいけば栄養失調で病院にぶち込まれそうな勢いだ。

 

「…メシ、食おうぜ」

「……うん」

 

手を引く。

俺が腹減ったと言えばコイツは大人しく従うのだ。

 

「お前も食えよ」

「分かってるよ」





何とか銀弾を留めおけるのがSSなとこある(騎手くんを除く)。
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