さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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各々安全祈願が渡されている世界線。



安全祈願の

「よく見たら結構古いんだな、コレ」

「え…?あぁ、ゴーグル(これ)のことですか」

 

ステイゴールドの同室であるシルバーチャンプは日常から勝負服の一部であるゴーグルを首からかけており。

よく熱心に磨いているのを見かけるそれはもはやトレードマークと言っても差支えはないだろう。

 

「にしては傷、あんま無いんだな」

「大切に扱ってますので」

「ふぅん…?」

 

勝負服に連なる物品は往々にして頑丈に作られているが。

ここまで傷ひとつないというのも珍しい。

 

「そんなに気になりますか?」

「え?あぁ、いや……なんか凄いなって思ってさ」

「……ふふ、いいですよ。お見せしますから少しお待ちを……」

「いいのか?」

「相手が先輩ですから」

 

そう言ってシルバーチャンプはゴーグルを外し、やさしく俺の手の内に渡す。

ゴーグルなんて水泳の授業やトレーニングでしか着けないから詳しいところは分からないが。

それでもこのゴーグルがかなり良いものであることは俺でも分かる。

 

「えへ、先輩だから特別ですよ?…それ、門の(かた)の物なので」

「はァッ!?」

「安全祈願ですって。今はアメリカにいる方も門の方の物を持っているらしいので。そちらは…耳カバーでしたっけね」

「…」

「なんですか、もう。鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔して」

「……その話聞いて、この顔にならん方がおかしいわ」

「…そうですかね?」

「そうだよ」

 

まさか、気軽に触らせられたものが本来ならURAの博物館に所蔵されていてもおかしくないシロモノときた。

しかも"門の方"の物で、ゴーグルとくれば、それは…。

 

「これ、ジャパンカップのか?」

「……あはは」

「あ、おい!笑うな!」

「いやだって……先輩、すごい顔で…!」

「お前なぁ……!」

「あはは、ごめんなさい!でも……ふふ、先輩もそんな顔するんですね」

「……まぁな。さすがの俺もな」

「…先輩、悪ぶってますけど礼儀正しいですし」

「うるせぇ」

「あだっ!」

 

しまりのない顔で笑うばかりの頭にチョップを入れ、ゴーグルを返す。

…普通なら他人に触れさせることはなかろう物であろうに何故俺なんぞに触らせたのか。

 

「先輩だからですよ」

「……そうかよ」

「はい、そうです」

「ったく……ほら、さっさと飯行くぞ」

「はーい!」

 

まぁ、これもシルバーチャンプなりの信頼の形なのだろうと勝手に納得することにして食堂へと向かう。

 

(そういえば)

(俺が知ってるってことは)

(他の奴らも知ってる可能性があるってことだよな……?)

触らせてもらったこと(これ)を知ったら、あいつらなんて言うんだろうなぁ……)

「…先輩?」

「…いや、何でもねぇよ」

 





安全祈願の物:
元々あるウマの使っていたもの。
その形状は様々で、勝負服から分けられた物もあれば筆記用具等などもある。
またそのすべてが『危ないこと』が近づくと熱を持つ性質がある…らしい。し、持ち物同士で惹かれあったりもするらしい。
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