さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ズキズキ。



見て見ぬふりの感情

「ステイさん?」

「お〜」

 

久しぶりに帰ってきた先輩を慌てて出迎えれば「ごめんな、遅くなっちまって」と謝られる。

「先輩が帰ってこないのはいつものことじゃないですか」と返せば、「これからは善処するから」と、少しバツが悪そうに笑った。

その笑顔に、思わず胸が締め付けられる。

この胸の痛みは、きっと……。

でも、この気持ちは隠さないといけない。

だって……俺は、ただの後輩だから。

だから、今日もまた俺は笑うのだ。

先輩を困らせないように、自分の気持ちに気付かれないように……。

そう決意して先輩を見れば、先輩は少し悲しそうな顔をしている。

その顔を見て、また胸が痛くなる。

……どうして?

そんな顔をされたら、期待してしまうじゃないですか……。

 

 

「チャンプ〜!」

「エル……」

 

ぼうっとしているとクラスメイトであるエルコンドルパサーに抱きつかれる。

慣れたものではあるが、ここ最近はその頻度が増えてきているようにも思う。

ちょっと控えてくれと、それとなく頼んでも黙殺されるばかりで、まるで聞く耳を持たない。

どうしたものかと考えていると、エルは今度は心配そうに俺の顔を覗き込んだ。

いつも騒がしい彼女のその様子に思わず驚いていると、エルは俺の頬に手を伸ばしてくる。

その手がやけに冷たく感じてしまって、思わず顔を逸らしてしまう。

そんな俺に構わずにエルは言葉を続ける。

最近なんだか元気がないように見えるけど何かあったの?なんて問いかけられてしまい、咄嗟に取り繕う事も出来なくて黙り込んでしまう。

そんな俺の様子を見たエルはさらに心配そうな顔をして俺の顔を覗き込んでくるものだから困る。

その表情を見ていると罪悪感に苛まれてしまいそうになるから逃げたいのだけど、残念なことに俺の体はガッチリとホールドされている。

 

「え、えと、あの…エル、離してくれると、助かるんだが」

「嫌デス」

 

即答される。

いや、なんでだよ。

 

「だって今のチャンプ、なんだか悲しそうデスから……そんなチャンプを放ってはおけませんヨ」

 

まるで自分の事のように心配してくれる彼女の優しさに胸がじんわりと温かくなる感覚を覚えると同時に申し訳なさも強く感じてしまう。

そんな顔をさせているのが自分自身だと思うと尚更だった。

 

「……ごめんな」

「え?」

 

俺の謝罪の意味を測りかねたようでキョトンとするエルに思わず苦笑してしまう。

そんな俺を見てさらに不思議そうな顔をするエル…といったところで、

 

「…おい」

「ステイさ…先輩!」

 

救世主!

突如として現れた先輩が俺とエルを引き離してくれた。

ベリッと擬音がつきそうな引き剥がし方だったが、今はそれどころでは無い。

助かった! と安堵すると同時に、息をつく。

そんな俺の様子など気にも留めずに先輩はエルに向き合う。

そして、一言……。

……いや二言三言ほど言葉をかけるとそのまま俺を伴って教室から出て行き。

 

「えっ」

「あ?もう放課後だろ?」

「それは…そうですけど」

「ならいいじゃねぇか」

 

そう言ってスタスタと歩いて行ってしまう先輩。

俺は慌ててその後を追う。

そんな俺の様子を見た先輩が、やさしく笑うものだから……また胸が痛くなる。

この痛みは一体なんなのだろうか?

わからない。

知りたくない。

だって知ってしまったらきっと戻れなくなってしまうから。

 





それはそうと牽制に大忙しなステイゴールドはいる。
絶対にいる(確信)。
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