さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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でも見てるのは…?



よくモテる

先輩はよくモテる。

そりゃあ見てくれはアウトローなのに、その実は気遣いできて文武両道で家柄も良いとくればモテないはずがない。

 

「先輩、またラブレター貰ったんですか?」

「……まあな」

 

先輩は素っ気なく言って、鞄から出した手紙の封を切った。

 

「でも、どうしてわざわざここで開けるんです? 部屋でゆっくり開ければいいのに」

「教室では人の目があるからな。こういうものは一人で読みたいんだ」

 

……さいですか。

俺は肩を竦めて自分の席に戻る。

と────。

 

「あれ? もう読んだんですか?」

 

横を見ると先輩が二通目の便箋に目を通しているところだった。

…本当にモテるな。

確かに先輩は格好いい。

頼るとすぐに手伝ってくれるし、何かと気遣ってくれる。

……あれ? もしかして先輩って何も知らない周りから見れば完璧超人か?

まあ、そんなモテモテの先輩がなんで僕みたいな奴を構ってくれるのかは謎だけど。

そんなことを考えていると、先輩は三通目の手紙を読み始めていた。

……まだ読むのか。

何通あるんだろ。

僕は先輩の横で手紙を読む様子を眺めることにした。

すると視線に気付いたのか先輩が顔を上げたので慌てて逸らす。

 

「なんだよ。…お前だってモテるだろうが」

 

先輩は手紙に視線を落としながら言う。

僕も思わず苦笑した。

確かに僕も先輩ほどではないが、ラブレターを貰ったことがある。

でも……。

俺は先輩の手にある三通の手紙を見る。

いま先輩が読んでいる便箋は淡いピンクに白い花柄の可愛いものだ。

そんな女の子らしい便箋で書かれている内容は、どれもこれも愛の言葉ばかりである。

 

「先輩」

「おう?」

「帰りましょ?」

「…ん」

 

一緒に寮の部屋に帰る。

 

「で、どうするんです」

「断るよ」

 

とはいえ。

先輩は色恋には興味がないようで。

レースに集中したいからと表向きは断っている。

……でも。

僕は知っている。

 

「先輩」

「ん〜?」

 

抱きつくとやさしく受け止めてくれる先輩に歪な笑みが漏れる。

案外潔癖な先輩がこう受け入れるのは僕だけだ。

……先輩。

僕は先輩の頬に擦り寄った。

先輩は少し驚いた顔をしたが、すぐに笑って僕の額にキスをしてくれた。

……ああ、幸せだな。

この幸せがいつまでも続きますように。

そんな願いを込めて僕は先輩に抱きついたまま目を閉じた。

 

 

(やっぱ甘えただなぁコイツ)

 

自分に抱きついて離れない後輩の頭をヨシヨシと撫でる。

本当俺のことが好きなんだよなぁ。

 

「お前、"仕事"できるようになるんかね…」

「…」

「めちゃくちゃ優秀なんだからさあ」





先輩は心配してるけど…?
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