一生癒えない、疵を遺そう。
己が名を、忘れるものがいないように…。
…たぶんこの√軸のウマ娘CB&皇帝は86宝塚記念を現地観戦してたんだろうなぁ。
「……やぁ、ミスター。会いに来てくれて、うれしいよ」
「………みっともないすがたで、すまないね」
すっかり翳った笑顔でキミが笑う。
その目じりには深深と黒い隈が刻まれていて、痛みのせいかは分からないが満足に彼女が眠れていないのは確かなことだと分かった。
「…そんなところで突っ立ってないで、……ほら、この椅子に座ってくれ」
「……え?ぼくに花?…ありがとう、きれいな花だなぁ。
あとで先生に生けてもらうよ…、ありがとう、ミスター」
虚ろな目で、そうキミは言う。
キミの周りにはたくさんの人から贈られた千羽鶴やにんじんなどがたくさん…。
「…あぁ、ミスター。よければそこにあるくだもの、いくつかもらっていってくれないかい?」
「……ぼく、さいきんあまり食欲がないんだ。このまま、おいておいたって、どうせ捨てられるだけだろうし」
「もったいないから……、ね?」
細く、華奢になった彼女の指がベッドサイドの棚に置いてあった果物がつまった籠を指す。
「キミは、どのくだものがすきだったっけね、ミスター」と弱々しく笑う彼女に思わずアタシは、
「ミスター…?」
駄目だと分かっていても、思わずその胸元を掴んでいた。
彼女の黒々とした、虚ろな瞳が困惑げにアタシを見やる。
「…笑ってよ」
「……え、?」
「笑ってよ!いつもみたいに!『今度こそキミに勝つ!』って!
アタシを睨みつけてよ!…っアタシに!『なんでお前は無事なんだ』って、……うぅ、うううぅ…!」
「…ミスター」
泣きじゃくるアタシの頭を「困ったなぁ」というような顔をした彼女が優しく撫でる。
アタシはそれが嫌だった。突き放して欲しかった。
突き放して、「同情するな」って、「お前に泣かれなくても、必ずターフに戻る」って、…彼女に、言って欲しかったのに。
「今度こそ、今度こそアタシに勝つんでしょう?
その脚で逃げ切る貴女をアタシが…!」
そう言ったアタシに、ゆるりとキミが首を振る。
あぁ、嗚呼嗚呼嗚呼…!
「嘘つき、嘘つき、嘘つきィ…っ!!」
「……ごめんね、ミスター」
こんどは、ぼくを、…おってこないでね。
*
「やぁ、ずいぶんと待たせたね」
ミスターシービーが泣きながら帰っていったあと、ずっと部屋の近くにいた彼女を部屋に招き入れた。
「……わたしは、」
「うん…」
「あなたに、かててません…たったの、いちども」
「…うん」
ぎゅう、と彼女が自身の手を強く握る。
血液が滴り落ちるほどに、強く、強く。
「…にげる、つもりですか」
「……そうなるね」
「勝ち逃げ、するつもりですか」
「…しかたないよ」
にこりと笑う僕に彼女-シンボリルドルフは顔を顰める。
ほんとうに、泣きそうに。
……ごめんね。
ある意味この世界線は10pt→銀弾の系譜を辿ってCBの仔ヤマニングローバルに繋がってんだろうなぁ…って。
なおこの世界線のウマ娘3人組(CB、銀弾、皇帝)のイメソンは『ロ/ウ/ワ/ー(ぬゆり)』。
CB:
ライバルのクッソ弱ってる姿にSAN値ガリガリ削られる。
いつもの彼女なら自分に言い返したり突っかかってきたりするはずなのに全部まるっと受け入れられてしまって絶望。
んで『今度は追ってくるなよ(意訳)』と言われてまた絶望した模様。
皇帝:
今度こそ勝ちます、してた相手に勝ち逃げされることになるウマ娘。
理想だけではどうにもならないことに直面してしまった。
たぶん対決初回の天皇賞・秋は銀弾のこと舐めてて、対決二度目の有馬記念はガチガチマークしたのに完封勝利キメられたからめちゃくちゃ感情煮詰めてそう。
そして初対決(85天皇賞・秋)の時、銀弾に『(CBと比べると)お前と走るの面白くない』って言われてからの、85有馬で『今日のお前と走るのは面白かったよ。また走ろう』って言われての"
僕:
この√だとウマ娘としての固有称号が『さよならはまだ言えない』な女。
クソほど弱ってる。
鎮痛剤打たれても眠れない。寝たらシんじゃうので。
ファンや周りからたくさんお見舞いの品をもらった。
基本気丈に振舞っているがだんだんシの影が濃くなってきている。
実はこの√史実にて白峰おじさんが対皇帝の際に『誰になんと言われようとバレットのライバルは未来永劫Mr.CBです。皇帝なんかお呼びじゃないんですよ』『正々堂々、って言うよりは仇討ちです。彼の
かの演出家の、『宿敵』としての意地を、…"世界"に見せつけるために。