さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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それ以外は。



そのためなだけ

人というイキモノは総じて面倒くさいものである。

ちょっと周りと違えば直ぐに目立つし、時には排斥されることもある。

しかし、目立ちたくないと引きこもれば生活が立ちいかなくなるのだから面倒くさい。

 

「はァ、」

 

有難いことに才能があるからと、トゥインクルシリーズに飛び込んだものの…誤算だった。

自分が思った以上に『自分』という存在は有名になってしまって、当初ドリームトロフィーには行かずに引退すると言った時はそれはそれは大騒動になったものだ。

何が『いつかキミに勝ってみせるから辞めないでくれ』だ、バカバカしい。

勝つとか負けるとか一時の些事に過ぎないのに。

何があの、引き止めてきた皆々様の琴線に触れたのか全くもって見当がつかない。

 

「ま、どうでもいいか」

 

一人ごちて、少し長くなった芦毛の髪を結い上げた。

今日はこれから、面倒見てるクラブの子たちの激励会がある。

……正直、行きたくないが。

でも、その子たちに『サボったら……わかってますよね?』と脅されてしまっては行かざるを得ないだろう。

 

「はぁ……」

 

ため息をひとつこぼして、仕方なく河川敷近くのターフへと足を向けたのだった。

 

 

そのクラブの特別顧問は目立つことを良しとしない。

とある縁あって指導をしてくれることとなったウマだが、その指導はとにかく厳しい。

練習も他のクラブと比べて何倍もキツイし、何よりサボれば次の日には体がなまるから皆必死だ。

しかし、それでいて普段は物静かなウマのだ。

口数は少ないし表情もあまり変わらないが、時折見せる優しい微笑みに心を掴まれた者は多いだろう。

そんな姿は一部の生徒に『親』と見られて慕われているとかいないとか……。

 

『せんせぇ!』

「はいはい」

『先生、今日は何の日か知ってます?』

「今日?知らないなぁ」

『え〜!知らないんですか!?』

『先生なのに!』

「はいはい……で、何なの?」

『ふっふーん!聞いて驚かないでくださいよ!』

『なんと!!』

「なんと……?」

『先生が来てくれて丸一年の日です!』

「……あ、そう」

 

そっけない返事にむくれる生徒たち。

その様子を他所に、ターフから見える空を見上げる。

 

(まだ、バレてはなさそうだが)

 

人気も実力もあり、客寄せパンダとして優秀だろう己は未だ追われる身である。

『心配しないで、探さないでください』と書き置きし、家族やトレーナーには時折連絡しているので第三者は騒いでいるかもしれないが、直接会いに来たりなどはまだない。

…まだバレるわけにはいかないのだ。

 

『先生!一緒に写真撮りましょう!』

「はいはい」

『えー!?先生も写ってくださいよぅ』

『せんせぇも一緒に!!』

「わかったから……ほら、撮るよ?」

 

パシャリ、と音がなる。

「はい、終わりね」と言ってカメラをしまう姿にまたブーイングが上がった。

(全く……)とため息を吐きつつも、その口元は。





日常生活を送る誰か:
本人に自覚なしだが人気も実力も兼ね備えている。
けど本人としては「そこそこのお金稼げたらいいな」のドライな感情だったため…?
たぶん周りとの認識の差がすごいぞ!
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