さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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大切なあなた。



大きくて、小さい

「似合う?」

 

少し遠慮がちに、そう言った父にシロガネハイセイコは「よくお似合いです」と返した。

よくある普通の紋付袴に「いつものではないんですか?」と、自身も所有しているあの純白の礼装を脳裏に描けば、「アレは少々時代に合わなくなってきたから」と寂しそうに告げられる。

 

「着ても家や親戚が集まった時ぐらいさ」

「…そうですか」

 

残念だな、と思う。

なぜなら、真白になった父の髪色にあの礼装はよく映えるはずだろうから。

 

「では、お父さま」

 

と、そこでシロガネハイセイコは居住まいを正し、手を差し出す。

 

「行きましょうか」

「ん」

 

目線で「まだひとりで歩ける歳なんだけどなぁ」と少し不満げな感情を向けられるが、転けられたりして怪我されると思うとたまったものではない此方としては譲れない。

 

「お父さまが転けたり、躓いたりすると大変ですから」

「……そんなドジしないよ?」

「それは知っていますが、万が一です」

 

断言する己の言葉に、父は少しだけ拗ねたような表情になるが、シロガネハイセイコは気にせずに続けた。

 

「お父さまは今年でいくつですか?」

「ん? ああ……××くらい?」

「はい、そうですね。つまりは立派な初老です」

「……うん?」

 

父の姿は若々しい。

よくよく見なければシワを見つけられないし、視力だって良いままだから、老眼なんて言葉とも無縁だ。

けれど、それでも…肉体は衰えている。

 

「お父さまはもう若くないんですよ」

「…………」

 

父はまた不満げな表情で、口を噤んだ。

 

「だから転けたり躓いたりして怪我をされても困りますし、万が一にも転んだ拍子に頭を打ち付けて脳がどうにかなっても大変です」

「………………」

「なので、どうぞ手をお取りください」

 

と、改めて手を差し伸べたシロガネハイセイコに渋々乗せられ握られる手。

 

「ホントにまだそんな歳じゃないんだって…」

「……お父さま?」

 

ぼそりと呟かれた言葉にシロガネハイセイコが反応を示すと、父は苦笑を溢した。

 

「いや、なんでもないよ」

「そうですか……」

 

そんなやり取りをしながら廊下を歩く中、ふと……父が口を開く。

 

「……ハイセイコ、大きくなったねぇ」

 

しみじみとした口調に、今度はシロガネハイセイコが口を噤んだ。

しかしすぐに笑みを浮かべて返す。

 

「お父さまの、お陰ですよ」

 

思い出すのはいつだって、あの日自分を救いあげてくれた小さな手で。

でも、いま自分が掴む手はとても小さく、こんなだったかしらと悲しいような、嬉しいような…。

 

「…」

「ハイセイコ?」

「いえ、何でも」





僕:
シルバーバレット。
生涯現役を目指しているため自分はまだ若々しい!という気持ち。
まぁ言われなきゃそう見えない見た目してるのはそう。
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