魂が引き寄せてるのかも?
(まさか自分がトレセン学園に来るとはねえ…)
このまま故郷に骨を埋めると思っていたのだけど、まさに合縁奇縁というやつで気づけば都会にえっちらおっちら。
故郷では見ることのないハイカラな街に視線を奪われながら何とか辿り着いた先にある学び舎にひっそりとため息をつく。
(いやホント、あの人僕に何が見えたんだろう。僕はどこにでもいるウマなんだけどなあ)
僕をこの学園に招いたのはあるトレーナーさんで。
何故だか僕に惚れ込んだらしいその人は凄まじい勢いで僕の家族から許可を取り、僕をここに引っ張ってきたのだ。
「いや、まあ……。あの人も悪い人じゃなかったしなあ」
ただちょっと頭のネジが外れていただけで。
そんなことを考えているうちに僕は学園に辿り着いたらしい。
目の前には巨大な校舎とその横に併設されたこれまた大きな寮があった。
(さてさて、どんな生活が待ってるのか)
期待半分不安半分で僕は門をくぐったのだった。
*
ちなみに家族が僕のトレセン学園入学を許す代わりにつけた条件のひとつが『セキュリティ万全なマンションでのひとり暮らし』である。
そのため僕が現在暮らしている場所はトレセン学園のそのまた上、URAが運営しているマンションである。
「うん、いい部屋だ」
間取りは一人暮らしには広すぎるくらいだけど、設備も整っているし何よりセキュリティがしっかりしているのが大きかったらしい。
流石にまだティーンエイジャーだからか、親の心配が嬉しいやら恥ずかしいやら。
「さてと……荷ほどきも終わったし、今日は早めに寝るかな……」
時刻はすでに深夜を回っている。
慣れない環境に疲労困憊だし、早く寝てしまおうとベッドに入った。
*
その転入生はすぐに生徒たちの目を奪った。
そもそも中等部からの持ち上がりの生徒が多いトレセン学園では高等部からの編入生などは珍しく、少々ウワサの的になるものだが、その転入生はそんなレベルではなかった。
「え、ええと…」
クラスメイトに矢継ぎ早に質問攻めにされながら困ったように笑うそのウマはどこか儚げで庇護欲をそそるものがあった。
身長こそ小柄だが、すらりと伸びた脚と腰回りは均整が取れている。
「ねえ、どこから来たの?」
「え?あ、その……××から……」
「好きな食べ物は!?」
「ええと、なんでも食べますよ。好き嫌いはないですし」
「趣味は!?」
「……読書とかですかね?」
転入生がそう答えるとクラスメイトたちは一斉に黄色い声を上げた。
どうやらこの転入生はかなり愛らしいらしく、しかも物腰も柔らかく人当たりもいいためあっという間にクラスに馴染んでしまった。
(これは……)
そんな様子を眺めていたひとりのウマがジィと睨みつける。
(誰も彼もに、笑顔を振りまいて…)
そして何も知らない…?