さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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強さとはなんぞや。



あなたの『こどく』

ウチの曾お祖父ちゃんは昔すごい競走バだったらしい。

ポスターにだってなったくらいだと周りは言うけれど、どうにも信じられない。

なにせ曾お祖父ちゃんはとても小さいし、闘争本能なんてこれっぽっちもなさそうだし。

小さい子と遊ぶのにいつもひいひい言ってる曾お祖父ちゃんがすごい競走バだったなんて、想像もできない。

でも……あのポスターのウマは本当にカッコよかった。

他バには目もくれず、まるで大空を翔る鳥のようにゴールだけを目指して駆けている小さなウマ。

アタシはそのウマがすごく気にいって、そのウマに関する映像とかそういうのを見れるだけ見た。

───初めてあのウマの映像を見た時は本当に感動した。

あのウマはすごいウマだ。

だってあんなに小さい体で後ろをぐんぐん引き離していくんだから。

影も踏めない、届かない、追い付けない。

きっとどんなウマだってあのウマには追いつけない。

アタシがどんなに強くなっても、きっとあのウマには勝てない。

そんな凄いものを持っているのに、なんであんなに寂しそうなんだろう?

なんであんなにつまらなそうに走ってるんだろう?

その時のアタシはどうしてそんな風に思うのかわからなかった。

けど……今ならなんとなくわかる気がするんだ。

 

(…これは、そう思うのも分かるかも)

 

端的にいうと、孤独。

周りはみんな自分に勝つことを諦めて、二着争いを精一杯する。

それを後目に自分は好きなように駆けていって、そして勝つ。

どれだけ手を抜いたって、誰も勝てないんだ。

 

(でもさ……)

 

それじゃ寂しいじゃんか?もっと本気で走ろうよ!ってアタシは叫びたくなる。

そんなの全然楽しくないじゃん!って。

 

(……でも、もうそんなこと有り得ないんだろうな)

 

だってあんなにすごいウマがそうだったんだから。

ただ淡々と走って、当たり前のように祝福されて。

いつしか競い合うことを諦めたんだろう。

そうしてそんな日々を繰り返して……やがて走ることを辞めていったんだと思う。

前に向かって進むことを辞めてしまったんだ。

 

(でも、本当にそれでいいのかな?)

 

アタシは走りたい、ターフを走りたいんだ!

もしかしたら何処かにアタシのライバルになってくれるようなウマが居るかもしれないじゃないか!

そんな相手に巡り合えるチャンスを自ら逃していいんだろうか?

そんなのは嫌だ。絶対に嫌だ!

それに……あの日、夢見たんだ。

 

「あのウマみたいに、なりたいなあ」

 

そう呟いた瞬間、ようやっと二着のウマがゴール板を抜けた。





すこし、孤独(それ)を理解した。
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