さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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誰も見てないがらんどう。



空っぽに救われて

「【英雄】?」

 

キミは他人をあまり認識していない。

みんなから視線を集めるが当の本人は気がつかない。

僕以外にもキミの気を引こうとしていた連中は大勢いた。

でもその誰も彼もが何度気を引こうとしても名前すら覚えてもらえない現状に段々と遠巻きになっていった。

だからだろう。

キミは有名にこそなったけど、誰からもその中身を知られることはなかったんだ。

だから一人ぼっち。

 

「どうしたの?」

 

でも僕だけは。

僕だけは知っている。

キミの中身が空っぽなことも、その心も、全部。

だから僕はキミの友だちになった。

いや、違うか。

僕の方こそ、キミに救われたから。

あの日、あの場所でキミが僕に声をかけてくれたから、僕は今ここにいるんだ。

でもそんな思いももう伝えることは出来ない。

何故なら僕がそれを言葉にする前に、もう全ては手遅れになってしまったのだから。

それは突然の出来事だったと思う。

いや違うか。

きっと前兆はいくらでもあったのだろうけど、気付こうとしなかっただけ。

だって、僕は。

僕はただキミと一緒にいれればそれで良かったから。

でもそんな僕のささやかな望みを嘲笑うかのように事態は進んでしまった。

 

「変な顔してるね」

 

空っぽが、変質していく。

上辺しか見ない周りは気づかない。

いや、気づいているはずだが何も言わないだけ。

だって僕は知っている。

キミがずっと無理して笑っていたことも。

キミが何も望まないのに全部受け入れるしかなかったのも。

だからせめて僕だけはキミに手を差し伸べていたつもり、だったんだけど。

でもキミは僕ではないアイツと一緒なんだ。

いや、それは必然だったのかも。

僕がどんなに望もうときっと運命だったんだと思うから。

でもその出会いが、僕の心を狂わせたのも確かだ。

ああ、───はじめてが僕だったなら。

 

「気分悪いの?」

 

僕でも良かったじゃないか。

 

「ねえ、プレアー」

「なに?」

 

でも、もうそれは叶わない。

もう僕はキミの一番ではないから。

だからせめて。

 

「僕と一緒にいて幸せだったかい?」

「うん」

 

その答えが聞けただけで満足だ。

ああ、良かった。

本当に良かった。

これでもう思い残すことはないよ。

……でももし叶うのなら、キミの一番になりたかったな。

いや、違うか。

僕はきっと最初からずっとキミが好きだったんだ。

僕と一緒に走ってくれるキミ。

僕に絶望しないキミ。

僕を見てくれるキミ。

ねえ、キミは僕の光だったんだ。

だから僕はキミに魅入られた。

ああ、もう時間だ。

この夢が覚めてしまう前に僕は最後に一つだけ伝えたい。

それはきっと呪いの言葉だけど、それでもいい。

もう僕は何も言えないけど、せめてその思いだけはここに残そう。

だから最後に一言だけ。

ああ、でもやっぱり少し怖いな。

もしこれが現実だったらって考えると震えが止まらないよ。

……でも大丈夫。

だってこれは夢なんだから。

 

「────好きだよ」





その声は届いたか。
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