さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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なんやかんやと。



そんなんだから!

「ねェ、ザンさん」

「どうした」

「人を好きになるって、どんな気持ち?」

 

そう質問された男はピタリと動きを止めた。

そして、

 

「…お前、タチ悪いなぁ」

「ふふふ」

「お前、奥さんいただろ」

「でも、あの子とは幼なじみみたいなもんだしネ。刷り込みと言えるかもだけど」

 

とんでもねぇ奴に執着するようになって幾星霜。

相も変わらず俺の気持ちを手のひらで転がすコイツは、楽しそう。

それを見るたびに、俺の気持ちは変わらないと思い知る。

未だコイツの心を奪えない俺は、件の妻にお前はかなわないのだと知らしめられる。

それが諦めきれないくらいに悔しくて仕方ないのは秘密だ。

まだ若いころのコイツがどうやって初恋を実らせたのかなんて知らないけれど、その相手が俺だったならと何度も思ったことをまた思うのだ。

そんな女々しいこと考えてたら、いつの間にか目の前に来ていたらしい。

俺の頬を両手で挟んで上を向かせて、いつものように可愛いペットでも見るような目を向ける。

そして、 ちゅっ、と軽い音を立てて俺の額に口付ける。

ただ触れるだけのそれだが、それだけでも俺の心拍数は上がるし、体温は上昇する。

コイツはそんな俺に満足して、また笑うのだ。

この小悪魔め。

でもそんなとこも可愛いと思ってしまうのだから俺も大概だ。

だから俺は今日もまた、コイツの手のひらの上で転がされる。

それはきっと、俺が死ぬまで続くんだろうなぁなんて思いながら、俺は今日もまたこの小悪魔に翻弄されるのだ。

 

 

(かわいいなァ)

 

元来可愛いものが好きな彼は自分に愛されて嬉しそうにするから、つい意地悪したくなってしまう。

でも、やりすぎると彼は拗ねてしまうから程々に。

 

(かわいいなァ)

 

ぼくの一挙手一投足に反応する彼が可愛くて仕方ない。

 

(可愛いなァ)

 

ぼくなんかに執着して振り回される彼が可愛くて仕方ない。

でもそんなだから、ぼくは彼のことを手放せなくなるのだ。

 

(……)

 

愛してる彼女がいた。

でも、彼女は若くして亡くなってしまった。

それから忘れ形見の娘を育てて、それでも心の隙間は埋められなくて。

そんな時に出会った彼だったから。

ぼくにとって彼は都合の良すぎる存在だった。

彼なら、彼女を失ったぼくの心の隙間を埋めてくれると思って、ぼくは彼を可愛がった。

彼と一緒に過ごす時間を増やして、ぼくは満たされたと思っていた。

でもそれはただのまやかしでしかなくて。

 

(…ごめんネ)

 

彼が好意を向けてきて、それをそれとなくふるたびに思うのだ。

彼女がいればこんな風にはならなかったのに、と。

真っ当に生きれたはずなのに、なんて。

 

(誑かしたぼくが言える筋合いない、か)





…お前のせいだよ定期。
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