さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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(いろんな意味で)燃えろよ燃えろ。

それはそれとして生存√銀弾って最終的に某北味さんみたいな専用馬房と自由に出入りできる専用パドックを与えられてると思う。
(種牡馬としての功績+そうしても何も問題を起こさないとヒトミミに信用されるくらい頭&気性がいいため)




俺には祖父がいた。

ある時を境に、気が違ってしまったらしい男。

不意に発作を起こしては暴れ、物を破壊する彼を誰もが避けて。

唯一彼が溺愛していた、らしい俺がいる時は比較的大人しくなるのでいつも俺は祖父の傍にいた。

友だちと遊びたいのを、押さえつけられて。

 

『アイツを捨てなければ、俺は幸せに…』

『アイツが、アイツが、アイツが…』

 

祖父の膝の上にあげられた俺が聞かされたのはいつだって"アイツ"に対しての恨み言だった。

"アイツ"が誰なのか、俺は知らなかった。

いや、知ることすらできなかった、という方が正しいか。

俺以外の家族はみんな"アイツ"のことを知っているようだった。

俺の兄姉は俺より一回りほど年上だったから。

両親に聞いたら有無を言わさず怒られるが故に、優しかった兄姉に「爺ちゃんの言う"アイツ"って誰?」と問えばいつも口を閉ざされ。

そして、

 

「お前が、お前がいれば俺は俺は、─────"シルバーバレット"ッッ!!!!

 

ひどく、衰弱しているはずだった。

だが最期の力を振り絞るように祖父は、そう叫んで、凄絶に叫んで、…亡くなった。

怒りとも呼べぬ、負の感情をすべて詰め込んだらこんな顔になるだろうという顔で、安らかというものとは程遠い顔で、祖父は。

 

「あれ…?」

 

それから、四十九日が経ったあと俺は祖父の遺品整理をしていた。

その中で古い帳面を見つけ、中を覗けば、そこには。

 

 

1980.6.25

時間が今日に切り替わってすぐ、やっと、ホワイトリリィから産まれた。

だがひどいくらいに産まれた仔は醜い。

再起をかけたというのに、苦肉の策でサラ系までつけたというのに、嗚呼…。

 

 

1980.8.×

アレの目が気持ち悪い。

それは牧場の皆も思っているのか、ストレス発散に棒で叩かれたりしているところをよく見る。

ホワイトリリィにはバレないようにしろよとだけ言っておいた。

あの馬は、父のホワイトバックよりはマシとはいえ…。

 

 

1981.1.2×

あの馬鹿の白銀の倅がアイツらを買っていった。

二束三文でも今は有難い。

 

 

1982.11.×

どうして、お前が勝っている?

 

 

1982.12.12

こんなこと、許してはいけない。

 

 

1983.2.2×

焼けた。

やけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけたやけた……。

 

 

ぜんぶ、焼けた。

 

 

そこでゾッとして帳面を閉じた。

何だこれは、何だこれは!?

 

 

出てきたワードを考える。

 

ホワイトリリィ。サラ系。ホワイトバック。白銀。『許せない』と書かれた日付の1982年12月12日…。

 

それらのヒントから最終的に導き出されたのは…、ある一頭の競走馬。

遠き日の祖父はとある生産牧場のウン代目かの主であるとともに、その牧場最後の主だった。

資金繰りに窮し、苦し紛れに再起を狙って作られたかの競走馬はいつしか…、戦前から続いていたその牧場の、最初で最後の最高傑作となる。

そんな馬を二束三文の値で売り飛ばした祖父は狂い、やがて…。

 

「…どうしよう、これ」

 

俺の手の中には祖父の『罪』がある。

今にも放り投げてしまいたいほどに"怨"の詰まっているものが。

 

「本当に、どうしよう…」





誰か:
見 つ け て し ま っ た 。
昔、どこかで牧場長をしてた祖父を持つ青年。
祖父のことがあまり好きじゃない、というかそれをひっくるめて自分に祖父を押し付けていた家族が嫌い。
遺品整理の際に、とある帳面という名の特級呪物を発見してしまった。
帳面の処遇をどうしようか悩んでいる。
だって手放すにも中に書かれてるもんが、ねぇ…?


誰かの祖父:
ある時を境に気が違ってしまった。
"アイツ"に対して恨み節全開。
その恨みっぷりは『焼いた』と帳面に書き記すほど。
寝ても醒めても"アイツ"に頭を支配されていた。
そしてえげつない怨嗟の言葉を叫んで亡くなった。
生き地獄を味わった?………いや、本番はこれからだよ。


"アイツ":
望まれたが、望まれなかった生まれ。
実は『目が気持ち悪い』と日々暴力を受けていた過去がある。
なお率先して彼に暴力を加えていたのは牧場長である誰かの祖父であった模様。
結果、それに追随した牧場の人間たちからもストレスの捌け口に。
…でもまぁ、そんなこともう過去なんですけどね。
幸せになったから、思い出す必要も、…ね?







…なので、僕は許してるんです。
貴方たちがいなければスタートラインにすら立てませんでしたから。
ですが…馬主さん&騎手くん+父&母+産駒+その他もろもろが許すかなァ!?(泣き+恐怖+戦慄)

A.たぶん許さないと思いますよ。

……ハイ。
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