さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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どちらが籠の鳥?



虜

目を覚ますと相変わらずの部屋。

ちゃんと誂えられているけど、何故か薄寒い部屋。

 

「おはよう」

「…」

 

寝起きでぼんやりしているとドアが開いて友人が入ってくる。

誰もが認める僕の親友であったはずの友人はある日突然おかしくなってしまった。

僕のことを閉じ込めて外に出るのを許してくれない。

外のことも教えてくれないし、僕の家族の名前すら呼ばせてくれない。

ただ、毎日決まった時間に僕を起こしに来て食事をさせてくれて、そして僕を愛してくれる。

僕はそんな生活がとても幸せだった。

でも、今日はなんだか少し様子が違った。

彼は手に何かを持っているようだったけどそれが何かは分からない。

いや、本当は分かっているはずなのに頭がそれを理解するのを拒否しているかのようだった。

それは注射器だった。

中には液体が入っているように見えるけど……まさかね?

そんなことを考えているうちに彼は僕の腕に針を突き立てた。

チクリと痛みが走ると同時に意識がぼんやりとしていく。

あぁ、だめだ……このまま意識を失ってしまってはもっと彼がおかしくなってしまう。

そう思いつつもまた瞼が落ちてくるのを感じた。

目が覚めると今度は夜だった。

あの注射器で打たれた薬の影響か頭がまだクラクラする。

そんな僕の隣には当然のように彼がいた。

彼はいつものように僕の頭を撫でながら言う。

その目はいつもの優しいものではなくどこか冷たいものだった。

そして彼は僕にこう言ったのだ。

 

「また、忘れてないんだね」

 

その瞬間、僕は理解した。

もう逃げられないんだということを……。

 

*

 

自他ともに認める親友だった。

誰からも愛されて、尊敬される自慢の友人だった。

だけどもそれが許せなくなったのはいつからだろう。

はじめはそれが誇らしかったはずなのに、気がつけば独占欲が湧いていた。

自分だけを見てほしい、他の奴と仲良くしないでほしい。

そんな思いが芽生えていったのだ。

それでも、必死に抑えようとしてきたつもりだったのに……いつからか歯止めが効かなくなっていった。

気づけば取り返しがつかないほどおかしくなっていたのだ。

そんな俺を諌めてくれた人もたくさんいたけど全て振り払った。

もう戻れないところまで来てしまったのだから仕方ないじゃないか!

だけどもそう思う一方で諦めに似た感情もあった。

きっと優しいアイツはこんな自分のことも受け入れるのだろうと。

小さくでも拒絶してくれればまだ諦めもつくというのに……。

それならば、とことんまでやってやる! そう思った結果がこれだ。

俺はアイツをここに縛り付けて自分だけのものにすることにしたのだ。

もう逃さないし誰にも渡さない。

 

「……███♡」





それでも幸せだって。
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