さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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なお。



銀系列(一般人のすがた)

『好き』がよく分からない。

うちの家系は自分も含め幼い頃からよくモテる家系ではあるが、決して節操なしというわけではなく。

本当に好きな相手と添い遂げるというが……自分が興味を持つような相手にまだ出会えていない。

自分もいずれは誰かを好きになって恋をして、婚約なんてことになるのだろうか。

父母とか親戚とかを見ているととても羨ましく思う時がある。

だってみんな好きな相手と一緒で幸せオーラが体からあふれ出してるし。

……もし自分がその好きな相手と上手くいって、いつかそうなれたらあんな風になるものなのだろうか?

いやはや、全然想像できない。

ただこうやってリア充爆発しろと思うような、思わないような。

そんな感じ。

……でもまあ、そうそう上手くいくわけもないか、と半ば諦めている自分がいるのも確かだ。

だから自分はまだ恋なんてしなくてもいいと思っているし、そもそもそんな相手が現れるかどうかすら分からない。

そんな自分の考えは、この年になっても変わらないままであった。

しかしある日、その考えは一変することになる。

 

 

ある休日の昼下がりのこと。

今日は特に予定もなく家でゴロゴロしていた。

両親は仕事の関係で家にいないため一人で過ごすことになる。

 

「……はぁい」

 

そうしていると不意に鳴るインターホン。

ちらりとドアスコープで外を覗けばそこには年若いウマ。

なんだ?と思いながらドアを開ければ、引越しの挨拶だと。

そんな気にしなくてもいいのにと思うが、まあそういうわけにはいかないのが世の常。

……しかしまあ。

年下とはいえ、可愛いなこの子。

青鹿毛色の綺麗な髪をしたその子は、どこか不安げな表情でこちらを見つめている。

……いや待て自分。

相手は初対面だ。

そんな不躾に見るものではないだろうに。

……と、そんなことを考えていると相手はおずおずとこちらに何かを差し出してくる。

その手には丁寧に包装された箱が握られていた。

どうやらお菓子のようだ。

それから一言だけ告げるとそのまま去っていってしまった。

 

「人見知りなのかね?」

 

 

一目惚れした。

相手は引っ越した先の隣室の人。

父母と一緒に住んでいるというその人はこちらとあまり年の変わらない芦毛のウマで、初対面の時は思わず見惚れてしまったくらいだった。

何とか普通に挨拶をできたが、はっきり言ってあの時の自分には余裕がなかった。

思い出すだけで鼓動の音が早くなっているのを感じる。

顔が熱い。

なんなんだろうこの気持ち。

それからというものの、ちょくちょく相手の部屋に遊びに行くようになった。

相手に会いに行く度に相手と仲良くなれていく気がして嬉しかったし楽しかったけど、どこかドキドキしてしまったりで落ち着かない日々が続いているようにも思える。

最初はぎこちない会話しかできなかったけれど最近では笑ってくれることも多くなった。

 

「はぁ……」





魔性なのは変わらない模様。
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