さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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それをかすかに。



あなたのなごり

「スー」

 

嵌め殺しの窓から空を眺めているとあの子に声をかけられた。

その声にテチテチと駆け寄れば優しく抱き締められる。

 

…この生活になってもう何年だろう。

僕のために誂えられた家は年々色々と僕が好みそうなあれこれが増えていって、もうすっかりあの子の家と言うより僕自身の家みたいになりつつある。

今の季節は丁度1月の終わり。

街も人も冷え込んでいることだろうな……と思う反面、僕はのんびりと部屋の中で過ごす。

気ままな生活、それが今の僕の過ごし方だ。

たぶん他人が見たら「辛くないの?」と聞かれそうな束縛具合だけど…。

 

(別に、何とも思わないんだよなあ)

 

普通なら怖がったり嫌がったりするんだろう。

でも僕としては…。

 

(嬉しいんだよなあ)

 

あの子が僕にこんなにしてくれるなんて。

あの子がここまで僕に執着してくれるなんて。

あの子が僕を……愛してくれるなんて。

 

(ずっと独りぼっちで)

 

僕はずっと独りぼっちだった。

正直、こんな大きな屋敷をいくつも持つほど財のある家に引き取られたこと自体は幸せだと思う。

けど、あの子ならもっといい子を迎えられたと思うんだ。

戦績だって(僕のことを除けば)問題ないし。

 

「なに考えてるの?」

「キミのこと」

 

…年々、僕に対する想いが重くなっている。

ちゃんと"仕事"だってしているようだけれど、それもひどく淡白だと聞いていて。

 

「本当に?」

「本当に」

 

ギュウギュウと抱き締められているので表情は見えないけれど、その声は弾んでいる。

僕からの好意が嬉しいらしい。

 

(かわいいなあ)

 

そんな僕の感想をわかっているかのようにあの子は強く抱き締める力をさらに強めたのだった。

 

 

あの子のための箱庭は暇さえあればアップグレードしている。

あの子を逃がすつもりは毛頭ないけれど、それでもあの子が不満を抱かないようにしなきゃ。

行こうと思えばどこにでも行けたあの子に選んでもらった早数年。

年々美しくなっていくあの子は一度外に出してしまったが最後攫われてしまいそうなぐらいで。

本当は"仕事"させたくないけれど、あれだけ説得されたら許してあげてもいいかなって。

 

(あの子の子どもなら)

 

あの子の子どもは牝馬が多い。

その多くがどこかしらあの子の要素を継いでいるから。

…それが代替だと言われればそうだけど。

 

「愛してるよ、スー」

 

だからずっと…ここに居て。

抱き締める腕の中にはすよすよと眠るキミの姿。

ああ……どうしてこうなっちゃったんだろう。

後悔はしていないけどさ。

 





感じていたいの。
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