さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

1422 / 1422

その血から生まれ落ちた……。



似たもの同士?

グッバイサンセットが引き取られたのはまだ幼い頃だった。

 

「はじめまして」

 

白髪(今となっては芦毛と分かるが)のウマがグッバイサンセットに手を差し伸べる。

「今日からキミの保護者になるおじさんだよ」と言うその人の腕はとても暖かくて、それでいてどこか哀しかった。

「お兄さん」と呼ぶには彼はやや年嵩であったし、かと言っておじさんと呼ぶには彼はまだ若い(ように見えた、その時は)。

「おじちゃん」と呼べば、彼は嬉しそうにした。

だからグッバイサンセットは彼をこう呼んでいた。

「おじちゃん」と。

それからの日々を、グッバイサンセットは今でも昨日のことの様に思い出すことが出来る。

それはとても幸せな時間だったから。

 

「……」

 

そんな夢を見た。

見渡すそこは見覚えしかない自分の寮部屋で。

同室は誰もいないひとり部屋は、学園に入学した頃から。

朝起きて、食事を済ませて授業へ。

 

「おはよう」

 

管理人室に行って職員さんに挨拶すると、「おはよう」と返事があって。

それで一日がまた始まるのだ。

 

「おはよう、サンセット」

「うん、おはよう」

 

スタスタと教室に行くとクラスメイトに挨拶され、挨拶を返す。

とはいえ、グッバイサンセットは中々他人の顔を覚えることができないので、『クラスメイト』だと分かっているが『名前が分からない』という状態であることが多い。

 

「おはよう、サンセット」

 

だからグッバイサンセットは教室で挨拶をされた時、「ああ、この人はクラスメイトなのか」と理解するのだ。

そして挨拶を返す。

 

「……おはよう」

「おはよう、サンセット。今日もいい天気だね!」

 

そんなやりとりが毎日続く。

 

「……」

 

家族も、自分を引き取ってくれたあの人ぐらいしかまともに覚えていない。

だから、グッバイサンセットはろくに覚えることが出来ない。

 

「おはよう、グッバイ」

「……」

 

だからクラスメイトに挨拶されても、それだけだ。

能動的になれない、そんな自分にもめげずに挨拶をしてくれるクラスメイトには感謝しているし、その思いに応えられないのがとても心苦しい。

 

(でも)

 

それでもグッバイサンセットは人の名前を覚えることが出来ないのだ。

「おはよう」と挨拶をされたら「おはようございます」と返すと分かっているからそうしているだけで。

 

(かえりたいなあ)

 

そう考えていると実家で待っているあの人に会いたくなった。

人の名前が覚えられなくても、寮から実家に帰ればあの人が家に居てくれるから。

 

「おはようございます」

「おはよう、サンセット」

 

しかし現実は儘ならないもので。

グッバイサンセットが帰省できるのは長期休暇の間ぐらいなのだ。

だからその期間を心待ちにしながら、毎日を過ごすのだ。

 





みんながみんな脳焼きなんだよね…。
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